天才と天才

8,林間合宿の班決め

次の日
いつもと同じように朝を過ごし、午後。

「今日は林間合宿についての班決めだぞ」


先生がそういうと普通の学校なら喜びの声が上がるだろう。
だけどここは芸術科高校。多くに生徒が芸能人などだからか…

「俺行けるかな」
「スケジュール合うといいけど…」

そんな不満な声がする。
ま、私には関係ないこと。

「うちは毎度行けないやつがいるから2組と合同で班を作っとけよ〜」

合同か〜結愛と新行けるかな

「凛〜林間合宿行けるー?」
「行ける〜結愛は〜?」
「私も行けるんだ〜!お母さんがスケジュール何とかしてくれて」

「おぉ!良かったね」
「どうする?新くん誘う?」
「どうせぼっちだろうし聞くだけ聞いてみよっか」

結愛がくすっと笑いながら言う。

「それ、本人の前で言ったら絶対怒るよ」

私は苦笑しながら、新の席へ向かった。

窓際の一番後ろ。
相変わらず無表情で、タブレットに何かを打ち込んでいる。

「新」

声をかけると、彼は顔を上げた。

「何」

「林間合宿、一緒の班どう?」

数秒の沈黙。

新は私と結愛を交互に見てから、淡々と言った。

「別にいいけど。合理的だし」

「合理的ってなにそれ〜」

結愛が頬を膨らませる。

その時。

「ちょっと待った!」

明るい声が教室に響いた。

振り返ると、2組の扉の前にひとりの男子が立っていた。

くしゃっと跳ねた茶髪に、日に焼けた肌。
人懐っこい笑顔が印象的な少年。

朝比奈 陸(あさひな りく)

2組所属。
人気急上昇中の俳優で、アクション映画で一気に注目を集めたらしい。
運動神経抜群で、誰とでもすぐ仲良くなれるタイプ。

「先生が言ってたろ?2組と合同だって」

陸はにっと笑って私たちの机に肘をついた。

「うちのクラス、もうみんな組んじゃってさ。俺ら余ったんだよね」

「……余ったっていうか、君がのんびりしてただけじゃない?」

新が冷たく言う。

「細けぇことは気にすんなって、天才くん」

陸はけろっと返した。

そして私を見る。

「獅童凛、だよな?体育祭のリレー見た。めちゃくちゃ速かった」

「え、見てたの?」

「そりゃ。あのラストスパート、やばかったし」

不意にまっすぐ褒められて、少し照れる。

結愛がにやにやしながら肘でつついてきた。

「おやおや〜?」

「ち、違うし」

「で、どう?俺も入れてくれない?」

私は新と結愛を見る。

結愛は即答だった。

「賛成!楽しそう!」

新はため息をつく。

「騒がしいのが増える……」

「それ拒否ってないってこと?」

「……好きにすれば」


これであと2人誰にしようかと考え出していると、

「ちょっと待ってください!」

凛とした声が響いた。

振り向くと、2組の女子がこちらへ歩いてくる。

長い黒髪を高い位置でひとつに結び、すっと背筋を伸ばした整った立ち姿。
どこか近寄りがたい空気をまとっている。

白雪 美琴(しらゆき みこと)

2組所属。
若手実力派のクラシックヴァイオリニストで、国内外のコンクールで何度も入賞している子のはず。

「朝比奈くん。あなた、また勝手に班を決めようとして」

「え〜?だって美琴もまだ班決まってないだろ?」

「それは……」

少し言葉に詰まる美琴。

結愛がぱっと笑顔になる。

「じゃあ一緒にどう? 女の子多い方が楽しいし!」

美琴は一瞬迷ったあと、小さく頷いた。

「……ご迷惑でなければ」

これで五人。

と思ったその時。

教室の後ろから、のんびりした声がした。

「おーい、それなら俺も混ぜて」

みんなが振り返る。

そこにいたのは、眠たげに目を細めた男子。

柔らかな栗色の髪に、ゆるく制服を着崩している。
どこか気だるげなのに、不思議と目を引く。

瀬名 蒼真(せな そうま)

1組所属。
作曲家兼シンガーソングライターとして活動していて、配信した曲が何度もランキング入りしている。

「俺もまだ班なくてさ」

「蒼真くんは絶対寝てて出遅れたでしょ」

結愛が呆れたように言うと、蒼真は肩をすくめた。

「否定はしない」

新が眉をひそめる。

「……自由人ばかり集まってきたな」

「お前が真面目すぎるだけだって」

陸が笑う。

こうして班は決まった。

運動の天才と言われている私。

頭脳の天才と言われている幼なじみの新。

人気モデルで親友の結愛。

明るく社交的な若手俳優。朝比奈 陸

クールな天才ヴァイオリニストの白雪 美琴

マイペースな作曲家の瀬名 蒼真。

個性がバラバラな六人。

先生が名簿を見ながら言う。

「よし、この六人な。林間合宿ではカレー作りとオリエンテーリングをしてもらうから、協力しろよー」
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