パーフェクト・ネイル ~憧れの上司に狙われている、かもしれません~
翌朝、妙な緊張感を覚えながらびくびくと出社した椛だったが、遠坂の反応は驚くほど平常通りだった。いつもと同じように朝の挨拶をして、課のミーティング、それからチームのミーティングを行い、遠坂が各自に仕事を振り分けたら、すぐに業務に取りかかる。
もちろん目が合っても「どうした?」と首を傾げられるだけ。「酒が抜けてないなら、下のコンビニでウコン買ってこい」と笑われるだけ。遠坂の態度は、昨日のやりとりなんて一ミリも覚えていない様子なのだ。
ほっと安堵したような、逆に拍子抜けしたような気分を味わいつつ、振り分けられた仕事を黙々とこなしていく。
しかし集中力が途切れたタイミングと同時に同僚の山本が席を立ったことで、また意識が遠坂に持っていかれた。
「主任、チェックお願いします」
「ん、見せてみろ」
立ち上がった山本が遠坂のデスクに近づき、現在進行中の作業について報告を始める。その様子をディスプレイの隙間からちらりと観察したことで、ふと気づいてしまう。