パーフェクト・ネイル ~憧れの上司に狙われている、かもしれません~

(ほんとだ……主任、爪見てる)

 山本の報告にはしっかりと耳を傾けているようだが、視線は彼女の手元に注がれている。その意味に気づくと、椛の中に小さなモヤモヤが生まれる。

(主任は、山本さんのネイルが好みなのかな……)

 山本の今日のネイルは、くすみピンクと白とグレーのアーガイルチェック柄だ。ピンク単色のみの指もあり、可愛らしさと大人の女性らしさが感じられる。

(白川先輩のネイルも可愛い)

 隣の席に座る白川の手元を見遣る。彼女のネイルはアイスブルー色のマグネットジェル。すべて単色ではあるが、指先が宝石のようにきらきらと輝いていて美しい。

 きっとネイルフェチの遠坂ならば、二人の指先もすでに確認済みなのだろう。

(私の今日のネイルは……好みじゃない、のかも)

 自身の指先を見つめて、そっとため息をつく。

 椛の今日のネイルは、ほんのりとラメが含まれたラズベリーカラーのグラデーション。いつもなら使わない大人びた色を無意識に選んだのは、『ネイルフェチだ』と教えてくれた遠坂の目に少しでも留まりたかったから。彼に興味を持ってほしかったから。
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