パーフェクト・ネイル ~憧れの上司に狙われている、かもしれません~

 しかし冷静に考えてみると、自分でもかなりおかしな行動をしたと思う。

 遠坂の視線と声と力強さのせいで酔いが覚めてしまったとはいえ、残業からの飲み会の後となると、帰宅した時点ですでに相当な真夜中だ。そこからさらに時間をかけてネイルを替えるなんて、奇行以外のなにものでもない。

 この変化を遠坂に気づかれたら、彼の性癖を意識していることが丸わかりになってしまう。ならば知られたくない。遠坂を意識して替えたネイルを遠坂には見られたくない、なんて、盛大な矛盾ではあるのだが。

「……野」
「……」
「おい、初野」
「え……? ……は、はい!」

 悶々と考え込んでいたところへ声をかけられ、がばっと顔を上げる。振り返るとすぐ傍に遠坂が立っていて、訝しげな表情で椛を見下ろしていた。

「みんな昼行ったぞ?」
「……え?」

 遠坂の一言にぱちぱちと瞬きする。

 慌てて周囲を見回してみると、チームごとで並べられたシマには椛と遠坂しかいない。驚いて壁にかけられた時計を見上げてみると、時刻は十二時を過ぎている。どうやら考えごとをしている間に、休憩時間になっていたらしい。
< 13 / 20 >

この作品をシェア

pagetop