パーフェクト・ネイル ~憧れの上司に狙われている、かもしれません~
「体調悪いのか?」
置いていかれたことに半泣きになっていると、椛のデスクに手をついた遠坂がそっと顔を覗き込んできた。
昨日ぶりの接近に内心慌てるが、努めて冷静に笑顔を作る。
「いえ、大丈夫です」
「そうか? 調子悪いときは、無理せず言えよ」
いつもと同じ、面倒見の良いまとめ役らしい表情と台詞で、椛を気遣ってくれる。だから椛も、曖昧に笑って礼を述べることにした。
夜中に必死にネイルを替えていたせいで少し寝坊してしまい、お弁当を作る時間がなかった。仕方がないのでコンビニか、天気もいいし外に食べに行っても……と考えながら外へ出る準備をしていると、その場を離れかけた遠坂が、
「ああ、そうだ」
と呟いて、元の場所へ手をつき直した。
遠坂の声に反応して顔を上げると、すぐ傍に迫った遠坂が耳元でなにかをぽつりと呟く。
「その爪も、似合ってる」
「!?」
ストレートに褒められたので、一瞬その笑顔に見惚れて固まってしまう。しかし数秒と経たないうちに現実を思い知る。
(ネイル替えたの、ばれてた!)