パーフェクト・ネイル ~憧れの上司に狙われている、かもしれません~

 ネイルフェチの遠坂は、椛のネイルが一晩で替わったことにもすぐに気がついたらしい。穴があったら入りたい気分である。

「ね、ネイルフェチのこと、内緒なのでは……?」
「知ってる初野相手に、内緒もなにもないだろ」

 恥ずかしさを隠すべく話題を封じようと試みるが、あっさり失敗に終わる。

 もちろん同じチームの人がいないというだけで、部署内には他のチームの人たちはいるが、小声で話せば聞こえない――この程度の声量で遠坂の性癖がバレることはない、と考えているらしい。

 作戦の失敗に、うぐ、と言葉に詰まると、遠坂がにこりと微笑んだ。

「ちゃんと見せてくれ」
「え……」

 遠坂に新しいネイルを見せてほしいと乞われ、たじたじと尻込みしてしまう。

 本来ならば見せる理由も必要もない。だが黒い瞳にじっと見つめられると、なぜか抗えなくなってしまう。指先に糸を結ばれたマリオットのように、求められるまま指先を差し出してしまう。

 羞恥と期待と緊張で縮こまりそうになる手を、遠坂に摑まえられる。彼の視線がラズベリージャム色の爪先に注がれると、自分の心臓の音以外なにも聞こえなくなってしまう。
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