パーフェクト・ネイル ~憧れの上司に狙われている、かもしれません~
「綺麗だな。……可愛い」
「!」
ドキドキと響く爆音の中に、遠坂の小さな呟きが混ざる。その一言に全身がぴくりと反応する。
(ちがう! これはネイルの話〜〜!)
椛の指先をまじまじと観察する遠坂が、爪の話をしていることはわかっている。決して椛自身の話をしているわけではないこともわかっているのに、率直な褒め言葉を嬉しいと感じてしまう。
しかしそろそろ止めなければいけない。今はまだ気にされていないが、あまりに長い時間手を握っていたら周りの人たちも気づくだろうし、何事かとも思うだろう。
そう考えて口を開きかけた椛だったが、それよりも遠坂の呟きの方が一瞬早かった。
「先、ちょっと尖ってるな」
「え……?」
遠坂の指摘に視線を落としてみると、たしかに右手の人指し指と中指の先が、他と比べると少しだけ鋭利に尖っている。右利きの椛は左手を使って右手の爪を整えるのがどうしても苦手なため、少し角度がついてしまったのだろう。
さすがネイルフェチというだけある。こんな些細な違いにも気づくなんて、と自身のミスと技術不足に恥じ入っていると、ふと遠坂が不満げな声を出した。