パーフェクト・ネイル ~憧れの上司に狙われている、かもしれません~
「背中痛そうだな」
彼がぼそりと呟いた瞬間、自分でも驚くほどの俊敏な動作で、シュバッと手を引っ込めてしまった。昨夜のやりとりを思い出させるような台詞を告げられ、条件反射で過剰反応してしまったのだ。
すぐに爪先で彼の手を引っ掻いてしまったかも、と焦ったが、遠坂は手を引っ込めたことよりも椛の表情に驚いたらしい。
「あ、悪い。これセクハラか」
「え……今さら!?」
「あはは、悪かったって」
まったく悪びれもせずに笑う遠坂を、少し強めに睨みつけてしまう。昨日からずっと遠坂にからかわれて遊ばれている気がして、無性に悔しくなったのだ。
人の気も知らないで、と頬に空気を溜めた椛は、そこでふと反撃の一言を思いついた。
「主任って、自分の爪も好きだったりしますか?」
「……は?」
椛の質問に目を丸くした遠坂が、少し間を置いて「いや、自分のは別に」と首を振る。
「なんでそう思うんだ?」
「形も長さも綺麗に整えているみたいなので」
女性のように色を塗ったり装飾を施しているわけではないが、遠坂の爪もかなり綺麗に整えられている。衛生面を考慮して短く整えている男性は多いが、遠坂のようにすらりと長く綺麗に整えられている爪は、少し珍しいと思うのだ。
「……なるほど」