パーフェクト・ネイル ~憧れの上司に狙われている、かもしれません~
椛の指摘に、遠坂が合点がいったように数度頷く。その横顔を見つめていると、ふと遠坂がこちらを見遣る。
目が合ったので「え」と声が出た直後、遠坂がにやりと微笑んだ。
「爪が長いと、相手の身体を傷つけるかもしれないだろ?」
「は……? えっ??」
「いつ機会に恵まれてもいいように、日頃から万全に準備してるんだよ、俺は」
ざわめく部署内ではおそらく椛にしか聞こえていない声量で、またも意味深な発言をされる。
今日は至近距離まで近づかれ、耳元で囁かれたわけではない。しかし昨日といい今日といい、椛の想像を刺激するような発言ばかりされ、つい挙動不審になってしまう。まるで『近い将来〝その機会〟が訪れる』と言わんばかりの熱っぽい視線を送られ、どう反応していいのかわからなくなる。
「あ……あっ、あの……」
昨日から、遠坂の様子がおかしい。人との関わり方に人一倍気を遣っているはずの彼が、なぜかぐいぐい距離を詰めてくる。
一体どうして、と狼狽していると、遠坂が椛から離れて微笑んだ。
「ほら、昼飯行ってこい。休み時間なくなるぞ」
「……。……ハイ」