パーフェクト・ネイル ~憧れの上司に狙われている、かもしれません~
 遠坂が「酔ってるのか?」と聞いてくるが、それほど酔ってはいない。明日も仕事なので、飲酒はかなり控えめにしたのだ。

 次の駅に辿りついて扉が開くと、ドア付近に立っていた人たちが次々と電車から出ていく。代わりに乗車してくる人が少ないと電車内がさらに広く感じられるが、遠坂も同じように――この会話を聞いている人はほとんどいない、と考えたらしい。

「ネイル」

 遠坂がぽつりと呟いた一言に反応して、再び彼の横顔を見上げる。

 夜になっても、スーツもシャツもセットした髪も乱れていない。彼も多少のお酒が入っているはずなのに、表情もいつも通り凛々しくさわやかだ。

 そんな彼の発言の意味一瞬理解できなくて、「はい?」と間抜けな声で聴き返してしまう。

「俺、女子の爪が好きなんだよ」

 今度は明確に、もっとわかりやすい表現で告げられる。そこまで言われて、ようやく先ほどの質問の答えが返ってきたのだと気づく。

 爪フェチ――それが、遠坂の秘めた性癖らしい。

「手フェチと違うんですか?」
「違うんじゃないか。手のフェチって、手のひらとか指も含むんだろ?」
「……たぶん」
「じゃあ違うな。俺は、手や指にはさほど興味ない」
< 4 / 10 >

この作品をシェア

pagetop