尊い推し兄弟に愛されてます!?
するとゆずくんが玲央くんを睨んだ。
「兄ちゃんのそういうところ、昔からムカつく」
「……は?」
「自分は余裕そうな顔して、何でも持ってくじゃん」
「……」
「相手が困ること平気で言うくせに」
二人は視線を逸らさない。
少しの沈黙の後、玲央くんが口を開いた。
「……俺がいつ余裕ぶってたよ?」
そう言って玄関のドアノブを引く。
その声は、いつもより自信なさげで……。
玲央くんらしくない言い方だった。
「え……」
ゆずくんが眉をひそめる。
玲央くんは背を向けたまま言った。
「お前が知らねぇだけだろ」
そう言った後、一度だけ振り返り私の方を見た。
どくんと大きく心臓が跳ねた。
「じゃあな」
それだけ言って、家の中へ入っていく。
ドアが閉まると、その場に沈黙が落ちる。
私もゆずくんも、きっと同じ事考えてる。
さっきの玲央くん、いつもと違かったから。
余裕があって自信に満ち溢れてる玲央くんじゃなかった。
どこか苦しそうで……。
「兄ちゃんもあんな顔すんだ……」
ぽつりとゆずくんが呟き、小さく笑った。
「案外わかりやすいじゃん」
「え?」
「ううん、俺も負けてらんないなって!」
「ゆずくん……?」
「一華!」
まっすぐに見つめられる。
「俺、本気だからね?」
「う、うん……」
ゆずくんの真っ直ぐな想いが眩しくて、私は目を逸らした。
きっと、少し前の私なら、その言葉だけで舞い上がっていたと思う。
でも今は違う。
私はゆずくんをうまく見返すことができなかった。
だって、私の中で答えはもう決まっていたから。
……でも、ゆずくんを傷つけることなんてできない。
そんな半端な考えの私は、すごくズルいのかもしれない。
だけど……自分の心だけはもう、誤魔化せなかった。