尊い推し兄弟に愛されてます!?
「道路に死んでたとんぼを拾って、泣いてしまうくらい優しい子なんですっ……」
「急になんなの!?」
「そんなゆずくんを、利用するみたいな言い方――」
その時、後ろから声がした。
「いっちゃん」
私は振り返る。
そこには、トイレから戻ってきたゆずくんが立っていた。
やばい……どっから聞いていたんだろう!?
表情は読めない。
怒ってるのか、呆れてるのか。
それとも――。
「ゆずくん……」
私が言いかけると。
ゆずくんは少し困ったように笑った。
「帰ろ、いっちゃん」
静かな声だった。
私は戸惑いながら頷く。
「えっちょっと……柚希っ」
女性が椅子から立ち上がろうとすると。
「もう来なくていい」
ゆずくんが女性へ向かって言った。
店内が静まり返り、女性が目を見開く。
「えっ……」
「聞こえてたから、全部」
ゆずくんは笑った。
でも、その笑顔は少しも笑っていなかった。
きっと心の中は……違うよね。
「もういいや」
そう言って私の手首を掴む。
「行こ」
私たちはそのまま店を出た。