尊い推し兄弟に愛されてます!?
でも次の瞬間、ゆずくんが私の肩へそっと手を置いた。
「ゆずくん?」
距離が近づく。
近……くない!?
何が起きているのかわからない。
そして……。
ちゅっ。
頬に柔らかな感触が落ちた。
一瞬。
本当に一瞬だった。
「……え?」
思考が止まる。
ゆずくんは少しだけ顔を離すと、悪戯が成功した子供みたいに笑った。
「ほんとだ」
「え?」
「この距離」
その笑顔が少しだけ切ない。
「キスもしやすいし」
数秒遅れて意味を理解した。
理解してしまった。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
公園中に声が響く。
「なななななな何してるの!?」
「キス。別に口じゃないからいいでしょ?」
「そういう問題じゃない!!」
頭が真っ白になる。
私はこんなにも心臓が壊れそうなくらいバクバクしているのに、ゆずくんは笑ってる。
でも……その目だけは真剣だった。
「やっぱ諦めらんないなぁー」
さっきまでの空気が一変する。
「ゆずくん……?」
「だってさ、今日も俺の事であんなに怒ってくれるんだもん」
「あ……それは本当にごめん。盗み聞きしちゃって……」
「ううん、心配してくれてたんでしょ?」
「うん……ずっと心配だった」
ゆずくんが困ったように笑った。
そして、真っ直ぐ私を見る。
「一華」
その呼び方に息が止まった。
いつもの『いっちゃん』じゃない。
「俺、本気で一華が好き」
夕陽が二人の間へ落ちる。
「……っ!?」
「だから……選んでもらえるように頑張る」
言葉が出ない。
頭の中が真っ白になる。
「じゃあ……恥ずかしいから先に帰る!」
ゆずくんはそう言うと、先に歩き出した。
「ゆ、ゆずくん!」
「気を付けて帰りなよ」
その後に呼び止めても、振り返らない。
ただ片手をひらひら振るだけ。
私はその場に立ち尽くした。
頬へそっと手を当てると、まだ熱い気がした。
う、嘘でしょ……ゆずくんが……?
……いつから?
帰りはどうやって家に着いたのかもわからない。
夕焼け空の下、ゆずくんの笑顔だけが脳裏に焼き付いて離れなかった。
修学旅行前のこの出来事が、
誰かに見られていたなんて……
この時私は知る由もなかった。