友達のまま
​第2話:アミという名の、世界で一番遠い特等席
​「アミ。今日の放課後、ちょっと付き合ってくんね?」


昼休み。自分の席をひっくり返して私の前に座った翼は、購買の焼きそばパンを齧りながら、いつもの気軽さでそう言ってきた。


「いいけど、何かあるの?」


「いや、なんか他校の女子に放課後呼び出されてんだけど、断るにしても一人だと気まずくてさ。アミが後ろにいてくれたら心強いなーと思って」


翼は「頼む!」と手を合わせて笑っている。


その瞬間、私の心臓が、冷たい氷水をかけられたみたいにヒヤリと凍りついた。


(……他校の女の子からの、告白だ)


翼は背が高くて、ちょっとぶっきらぼうだけど、笑うとすごく優しくて、昔からとにかくモテる。


そんなこと、痛いほど分かっていたはずなのに。


「呼び出し」という言葉を聞いただけで、胸の奥がドロドロとした黒い感情で満たされて、息ができなくなる。


(嫌だ。行かないで。他の女の子の言葉なんて、聞かないで――)


心の中で、何百回も、何千回も、そんな獰猛な独占欲が叫び声をあげる。


だけど、私の顔は、長年鍛え上げた『最高の友達』の仮面を完璧に着こなしていた。


「なーんだ、そんなこと? 翼ってば、相変わらずヘタレだなぁ」


私はわざとらしくケラケラと笑って、翼の肩を軽く小突いてみせる。


「しょうがないから、アミ様が後ろから見守ってあげるよ。ちゃんとかっこよく断るんだよ?」


「サンキュ! やっぱりお前は持つべき最高のダチだわ!」


翼は嬉しそうに笑って、私の髪をくしゃくしゃに撫でた。


最高の友達、持つべきダチ。


その言葉が、鋭いナイフになって私の胸に深く突き刺さる。


放課後、学校の裏手にある寂しい公園の木陰。


私は翼に言われた通り、少し離れた自販機の陰から、二人の姿を見つめていた。


翼の前に立っているのは、可愛いリボンをつけた、いかにも女の子らしい綺麗な子だった。


一生懸命に顔を真っ赤にして、翼に手紙を差し出している。


遠くて声は聞こえないけれど、その子が翼をどれだけ一途に想っているかは、痛いほど伝わってきた。


(見たくない。見たくないよ……っ)
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