理系喪女の私がこんなにモテていいわけがない
日曜日。本来、学生は休日だ。
だが、俺は一人、研究室に馳せ参じていた。
別に勉強が大好きってわけではない。でも今日はこれからバイトが入っているので、中途半端な空き時間を無益に過ごすのも嫌だな、と思って研究室に来ている。
シフトまであと約三時間。中途半端過ぎて家にいてもゆっくりできないし、まかないもつくからご飯でもっていうふうにもならない。こんな日は誰もいない研究室で好きなように論文や専門書を読んだり、気になる専門サイトをチェックしたり、来年度から始まる就活に向けて情報収集するのが一番いい。
俺は平日と変わらない感じでパソコンを触りながら空いた隣の席を眺めた。
瑞樹は今頃、小春ちゃんとよろしくやってんのかな。恋愛は二の次なんて格好つけて強がりを言っているけど、彼女持ちの奴が羨ましくないわけではない。
俺はもやっとして、ふと席を立つ。タバコでも吸ってこようかな。ポケットに携帯と電子タバコの機器を入れて、研究室の扉を開ける。
外へ出るために棟の下に降りるか、それとも右側の廊下の先にある非常口のドアを開けてそこで吸うか。
さて、どっちにしようかな、と研究室を出たところで思案する。すると、突き当たりの廊下の、四部屋ほど先にある院部屋のドアが開き始めていることに気が付いた。誰かが部屋から出てくる。
――あ、相川さんだ。
相川さんは俺に気付かずに、反対側にある物品庫の方へ向かう。うわ、ミニスカート。黒いタイトなスカートからすらりと真っ白な足が伸びる。
なんか楽しそう、相川さん。ふんふんと曲名の分からない鼻歌を歌いながら反対側の突き当りにある物品庫へと歩いていく。そういえば、相川さん、以前からよく物品整理をしていたな。誰にも頼まれていないのに。
物品整理なんて面白いことは何もないのに、それを楽しそうに休日にやるなんて変わった趣味だ。俺は廊下の暗がりの中で相川さんの後姿を見送る。
え、ちょっと待て。今、すごくいいこと思いついたぞ。俺は脳内で最高のシチュエーションを再生する。
~ 俺が物品整理を手伝いに行く妄想劇場 ~
相川さん「え、ありがとう。手伝ってくれるの?」
俺「もちろん。お安い御用ですよ」
相川さん「あ! 躓いちゃった!」
(ここでパンチラ)
俺「大丈夫ですか? 俺に任せてくださいよ」
(出来れば抱き起こす)
相川さん「素敵、鈴木君! 頼りになるのね! 好き!」
(相川さんが俺に抱きつく。頬にキスされるとなお良い。)
――めでたし、めでたし。
――という、ワンシーン。
よし! これでいこう!
妄想通りに「好き!」とはならなくとも、俺に対する好感度は格段に上がるはずだ。相川さんは確か今、彼氏いなかったはず。よぅし! この作戦で行こう!
俺は電子タバコを吸うのを止めて一人、物品庫へと向かった。
休日の有機化学研究室のフロアはしんとしていて、他に人気はなかった。
* * *
相川さんから少し遅れて物品庫に到着する。廊下の突き当りの角にある物品庫は薄暗く、段ボールや厚紙が堆積した古い紙の束みたいな匂いがする。入口は小さく、部屋の奥行きは広い。中にはいくつも背の高い棚が並んでおり、常に視界を遮っている。
俺は相川さんを驚かせないように何とか自然に登場する方法がないかと思案しつつ、入口の廊下側の壁際に佇んでいた。こういうところが童貞なんだよな。瑞樹みたいに「どうしたんですかー」とか言いながら気軽に入っていければいいんだけど。
そう考えて一人黙りこくっていると、物品庫の中からぼそぼそと話し声がしていることに気付いた。
一人はもちろん相川さん。もう一人は? 低い男の声だ。誰――? 俺は神経を集中して耳を澄ます。
「なんで住良木さんが物品庫にいるんですか」
「なんだよ、いちゃ悪いのかよ。俺だって物品庫に用があることぐらいあるよ」
うわ! 住良木皐月! 俺は思わず仰け反る。
住良木さんは俺の直の指導員ではないが、天才・イケメン・名門 帝海大出身・クオーター・オラオラ系と特徴があり過ぎるくらい乱立している人物で俺の苦手とする人種だった。
というか女子以外、住良木皐月に好感を抱く人間は少ないんじゃないか。あの人は俺らと違って、生まれながらにしてこの世の全てを手中に収めている気がする。
「なんでミニスカなんか履いてんだよ」
「ちょ、捲らないでください。これからデートなんですよ。笠井君と水族館。今夜、学割なんで」
は?! 「捲る」?! 俺は聞き捨てならない台詞を聞いて、ますます熱心に聞き耳を立てる。何やってんだ、住良木さんと相川さん。ていうか、デートって?! 相川さん、院生の笠井さんと付き合っていたのか!!
「俺と会う時はこんなの履かないくせに」
「だから、捲らないでくださいって。だって住良木さん、すぐ脱がすから何着ても一緒でしょ。意味ないですよ。笠井君は褒めてくれるんです。足、綺麗だねって」
はあ?! 「脱がす」?! 何言ってんだ、相川さん! てことは相川さん、住良木さんとヤッてんのか?! でも、さっき笠井さんと付き合っているみたいなこと、言ってたよな?! どういうこと?! 二股?!
俺は大混乱の中、盗み聞きを止められずに物品庫の出入口の壁にへばりついていた。相川さんも住良木さんも俺に気付かずに会話を続ける。
「水族館の後、俺も合流していい?」
「駄目です。今夜は笠井君と二人がいいんです。ていうか昨日したじゃないですか。足りなかったですか?」
うおおお! 前夜、ヤッてた! 俺の鼓動がどくどくと脈打つ。息を殺して会話に集中する。
「そういう問題じゃねえの。お前、わかってねえな。いいじゃん、こないだみたいに三人でやれば」
「嫌ですよ。あれ、すごく疲れるんです。もうしないって言ったじゃないですか」
ふえ! 3P! そんなことまでしてんのか、相川さん! とことん想定外の展開に俺はどんどん興奮していく。
「じゃあ、今、何とかしてもらおっかな。このスカート、ヤバいんだけど。これ履いてると、お前、どっかで襲われるぞ」
「ちょ、やめてくださいよ。襲うのは住良木さんぐらいですよ。だから、手、入れないでって。ちょっと、やめて――」
二人の台詞が途切れる。何か声を詰まらすような息遣いと奇妙な水音が聞こえ始める。――え、ちょっと、これ。もしかして――。
「やあ、だめ、住良木さん。ここ学校」
「知ってるよ。日曜だしどうせ人なんか来ねえだろ」
合間にクチュクチュと滑り気を帯びた水音が聞こえる。マジか――。
「ちょっと、あっ、あっ、ダメ、入れないで」
ふうふうと熱い呼吸音が聞こえる。物品庫の中の音? それとも俺の呼吸?
「やぁ、やだって。あぁっ、ううん」
相川さんの声がどんどん艶っぽくなっていく。ヤバい、俺の股間が反応し始める。
――見たい。俺は凄まじい欲求に突き動かされて、物品庫の半開きになったドアにそっと頭を突っ込んだ。薄暗い埃っぽい室内に、静かに啼く猫のような喘ぎ声とぬちゃぬちゃとした水音が響く。
そっと中を見渡す。見た感じ、相川さんも住良木さんもいない。どこだ。俺はどうしても見たくなって更に奥に首を突っ込んで左右を見る。
ばちっ!
入口から向かって左、二つ先にある棚の奥で相川さんらしき女性の頭を抱えている男性と、ランダムに積まれた物品の隙間越しに目が合った。
住良木皐月! 暗がりでも目立つぐらい抜けるように色が白く、だらりと垂れた茶色い長い髪の隙間から鋭い灰色の目が覗いている。ヤバい! 覗いているのがバレた!
「やだぁ、人が来ちゃう。だめぇ」
俺に気付かずに相川さんが喘いでいる。エグい程のエロさに股間が張り裂けんばかりに怒張する。
「大丈夫。人なんか来ねえよ。昨日みたいにイケって」
相川さんの耳の辺りを舐めながら、住良木皐月が俺に向かってニヤリと笑う。灰色の目がギラリと光る。ひえ、天才美青年の悪魔の微笑み。
俺はその表情が恐ろしくなり、静かに顔を引っ込めて、物音を立てないように細心の注意を払いながら物品庫を後にした。
青息吐息の状態で何とか自分の研究室の席に戻る。まだ胸がどきどきしている。
「――あ」
やべぇ。股間がぎりぎり突っ張って、がまん汁がパンツを濡らしにかかる。とりあえず一旦家に戻らないと。こんな状態ではバイトどころではない。
ええと、つまり話を整理すると――。
俺は大学の駐輪所で股間の違和感に耐えながら自転車に跨った。
エロかわの相川さんは院生の笠井さんと付き合っている、でいいんだよな? で、エグいイケメンの住良木皐月とヤリまくっていて、それを笠井さんは知っていて時々3Pしているってことか??
自転車を漕ぎながら、ごくりと唾を飲む。また股間に異物感を感じて一刻も早く帰宅しようと素早くペダルを踏みしめる。
なんだ! めちゃくちゃエロいじゃねえか!! エロ過ぎて想像の向こう側なんだが。俺は熱いアスファルトの上を自転車で駆け抜ける。
耳に相川さんの喘ぎ声が残っている。と、同時にあの俺のことを殺しそうな住良木皐月の鋭い目も忘れられない。
「――俺、あの院部屋でうまくやっていけんのか――?」
順当にいけば今、大学院二年生の笠井さんが卒業して、来年度は相川さん、住良木皐月と同室ってことになる。嘘だろ。3Pじゃん。
「俺にもワンチャンないかな――」
あの住良木皐月の形相からして俺にチャンスは全くないんだろうけど。
まあいいや。早く帰って抜いてからバイトに行こう。このままじゃ仕事に支障をきたす。
俺はごちゃごちゃ考えるのを止めて、一人家路を急いだ。先のことはそうなってからまた改めて考えればいい。
雨が降らない今日この頃、昼下がりのアスファルトの照り返しがいつもより熱いように感じられた。
だが、俺は一人、研究室に馳せ参じていた。
別に勉強が大好きってわけではない。でも今日はこれからバイトが入っているので、中途半端な空き時間を無益に過ごすのも嫌だな、と思って研究室に来ている。
シフトまであと約三時間。中途半端過ぎて家にいてもゆっくりできないし、まかないもつくからご飯でもっていうふうにもならない。こんな日は誰もいない研究室で好きなように論文や専門書を読んだり、気になる専門サイトをチェックしたり、来年度から始まる就活に向けて情報収集するのが一番いい。
俺は平日と変わらない感じでパソコンを触りながら空いた隣の席を眺めた。
瑞樹は今頃、小春ちゃんとよろしくやってんのかな。恋愛は二の次なんて格好つけて強がりを言っているけど、彼女持ちの奴が羨ましくないわけではない。
俺はもやっとして、ふと席を立つ。タバコでも吸ってこようかな。ポケットに携帯と電子タバコの機器を入れて、研究室の扉を開ける。
外へ出るために棟の下に降りるか、それとも右側の廊下の先にある非常口のドアを開けてそこで吸うか。
さて、どっちにしようかな、と研究室を出たところで思案する。すると、突き当たりの廊下の、四部屋ほど先にある院部屋のドアが開き始めていることに気が付いた。誰かが部屋から出てくる。
――あ、相川さんだ。
相川さんは俺に気付かずに、反対側にある物品庫の方へ向かう。うわ、ミニスカート。黒いタイトなスカートからすらりと真っ白な足が伸びる。
なんか楽しそう、相川さん。ふんふんと曲名の分からない鼻歌を歌いながら反対側の突き当りにある物品庫へと歩いていく。そういえば、相川さん、以前からよく物品整理をしていたな。誰にも頼まれていないのに。
物品整理なんて面白いことは何もないのに、それを楽しそうに休日にやるなんて変わった趣味だ。俺は廊下の暗がりの中で相川さんの後姿を見送る。
え、ちょっと待て。今、すごくいいこと思いついたぞ。俺は脳内で最高のシチュエーションを再生する。
~ 俺が物品整理を手伝いに行く妄想劇場 ~
相川さん「え、ありがとう。手伝ってくれるの?」
俺「もちろん。お安い御用ですよ」
相川さん「あ! 躓いちゃった!」
(ここでパンチラ)
俺「大丈夫ですか? 俺に任せてくださいよ」
(出来れば抱き起こす)
相川さん「素敵、鈴木君! 頼りになるのね! 好き!」
(相川さんが俺に抱きつく。頬にキスされるとなお良い。)
――めでたし、めでたし。
――という、ワンシーン。
よし! これでいこう!
妄想通りに「好き!」とはならなくとも、俺に対する好感度は格段に上がるはずだ。相川さんは確か今、彼氏いなかったはず。よぅし! この作戦で行こう!
俺は電子タバコを吸うのを止めて一人、物品庫へと向かった。
休日の有機化学研究室のフロアはしんとしていて、他に人気はなかった。
* * *
相川さんから少し遅れて物品庫に到着する。廊下の突き当りの角にある物品庫は薄暗く、段ボールや厚紙が堆積した古い紙の束みたいな匂いがする。入口は小さく、部屋の奥行きは広い。中にはいくつも背の高い棚が並んでおり、常に視界を遮っている。
俺は相川さんを驚かせないように何とか自然に登場する方法がないかと思案しつつ、入口の廊下側の壁際に佇んでいた。こういうところが童貞なんだよな。瑞樹みたいに「どうしたんですかー」とか言いながら気軽に入っていければいいんだけど。
そう考えて一人黙りこくっていると、物品庫の中からぼそぼそと話し声がしていることに気付いた。
一人はもちろん相川さん。もう一人は? 低い男の声だ。誰――? 俺は神経を集中して耳を澄ます。
「なんで住良木さんが物品庫にいるんですか」
「なんだよ、いちゃ悪いのかよ。俺だって物品庫に用があることぐらいあるよ」
うわ! 住良木皐月! 俺は思わず仰け反る。
住良木さんは俺の直の指導員ではないが、天才・イケメン・名門 帝海大出身・クオーター・オラオラ系と特徴があり過ぎるくらい乱立している人物で俺の苦手とする人種だった。
というか女子以外、住良木皐月に好感を抱く人間は少ないんじゃないか。あの人は俺らと違って、生まれながらにしてこの世の全てを手中に収めている気がする。
「なんでミニスカなんか履いてんだよ」
「ちょ、捲らないでください。これからデートなんですよ。笠井君と水族館。今夜、学割なんで」
は?! 「捲る」?! 俺は聞き捨てならない台詞を聞いて、ますます熱心に聞き耳を立てる。何やってんだ、住良木さんと相川さん。ていうか、デートって?! 相川さん、院生の笠井さんと付き合っていたのか!!
「俺と会う時はこんなの履かないくせに」
「だから、捲らないでくださいって。だって住良木さん、すぐ脱がすから何着ても一緒でしょ。意味ないですよ。笠井君は褒めてくれるんです。足、綺麗だねって」
はあ?! 「脱がす」?! 何言ってんだ、相川さん! てことは相川さん、住良木さんとヤッてんのか?! でも、さっき笠井さんと付き合っているみたいなこと、言ってたよな?! どういうこと?! 二股?!
俺は大混乱の中、盗み聞きを止められずに物品庫の出入口の壁にへばりついていた。相川さんも住良木さんも俺に気付かずに会話を続ける。
「水族館の後、俺も合流していい?」
「駄目です。今夜は笠井君と二人がいいんです。ていうか昨日したじゃないですか。足りなかったですか?」
うおおお! 前夜、ヤッてた! 俺の鼓動がどくどくと脈打つ。息を殺して会話に集中する。
「そういう問題じゃねえの。お前、わかってねえな。いいじゃん、こないだみたいに三人でやれば」
「嫌ですよ。あれ、すごく疲れるんです。もうしないって言ったじゃないですか」
ふえ! 3P! そんなことまでしてんのか、相川さん! とことん想定外の展開に俺はどんどん興奮していく。
「じゃあ、今、何とかしてもらおっかな。このスカート、ヤバいんだけど。これ履いてると、お前、どっかで襲われるぞ」
「ちょ、やめてくださいよ。襲うのは住良木さんぐらいですよ。だから、手、入れないでって。ちょっと、やめて――」
二人の台詞が途切れる。何か声を詰まらすような息遣いと奇妙な水音が聞こえ始める。――え、ちょっと、これ。もしかして――。
「やあ、だめ、住良木さん。ここ学校」
「知ってるよ。日曜だしどうせ人なんか来ねえだろ」
合間にクチュクチュと滑り気を帯びた水音が聞こえる。マジか――。
「ちょっと、あっ、あっ、ダメ、入れないで」
ふうふうと熱い呼吸音が聞こえる。物品庫の中の音? それとも俺の呼吸?
「やぁ、やだって。あぁっ、ううん」
相川さんの声がどんどん艶っぽくなっていく。ヤバい、俺の股間が反応し始める。
――見たい。俺は凄まじい欲求に突き動かされて、物品庫の半開きになったドアにそっと頭を突っ込んだ。薄暗い埃っぽい室内に、静かに啼く猫のような喘ぎ声とぬちゃぬちゃとした水音が響く。
そっと中を見渡す。見た感じ、相川さんも住良木さんもいない。どこだ。俺はどうしても見たくなって更に奥に首を突っ込んで左右を見る。
ばちっ!
入口から向かって左、二つ先にある棚の奥で相川さんらしき女性の頭を抱えている男性と、ランダムに積まれた物品の隙間越しに目が合った。
住良木皐月! 暗がりでも目立つぐらい抜けるように色が白く、だらりと垂れた茶色い長い髪の隙間から鋭い灰色の目が覗いている。ヤバい! 覗いているのがバレた!
「やだぁ、人が来ちゃう。だめぇ」
俺に気付かずに相川さんが喘いでいる。エグい程のエロさに股間が張り裂けんばかりに怒張する。
「大丈夫。人なんか来ねえよ。昨日みたいにイケって」
相川さんの耳の辺りを舐めながら、住良木皐月が俺に向かってニヤリと笑う。灰色の目がギラリと光る。ひえ、天才美青年の悪魔の微笑み。
俺はその表情が恐ろしくなり、静かに顔を引っ込めて、物音を立てないように細心の注意を払いながら物品庫を後にした。
青息吐息の状態で何とか自分の研究室の席に戻る。まだ胸がどきどきしている。
「――あ」
やべぇ。股間がぎりぎり突っ張って、がまん汁がパンツを濡らしにかかる。とりあえず一旦家に戻らないと。こんな状態ではバイトどころではない。
ええと、つまり話を整理すると――。
俺は大学の駐輪所で股間の違和感に耐えながら自転車に跨った。
エロかわの相川さんは院生の笠井さんと付き合っている、でいいんだよな? で、エグいイケメンの住良木皐月とヤリまくっていて、それを笠井さんは知っていて時々3Pしているってことか??
自転車を漕ぎながら、ごくりと唾を飲む。また股間に異物感を感じて一刻も早く帰宅しようと素早くペダルを踏みしめる。
なんだ! めちゃくちゃエロいじゃねえか!! エロ過ぎて想像の向こう側なんだが。俺は熱いアスファルトの上を自転車で駆け抜ける。
耳に相川さんの喘ぎ声が残っている。と、同時にあの俺のことを殺しそうな住良木皐月の鋭い目も忘れられない。
「――俺、あの院部屋でうまくやっていけんのか――?」
順当にいけば今、大学院二年生の笠井さんが卒業して、来年度は相川さん、住良木皐月と同室ってことになる。嘘だろ。3Pじゃん。
「俺にもワンチャンないかな――」
あの住良木皐月の形相からして俺にチャンスは全くないんだろうけど。
まあいいや。早く帰って抜いてからバイトに行こう。このままじゃ仕事に支障をきたす。
俺はごちゃごちゃ考えるのを止めて、一人家路を急いだ。先のことはそうなってからまた改めて考えればいい。
雨が降らない今日この頃、昼下がりのアスファルトの照り返しがいつもより熱いように感じられた。