理系喪女の私がこんなにモテていいわけがない
「おーさすがハイ〇ット〇ージェンシー。俺も偉くなったなぁ」
ホテルの部屋に入るなり、目に飛び込んでくる煌びやかな夜景に住良木さんがはしゃぐ。私はその後ろから黙って続いて入り、サイドテーブルにハンドバッグを置く。
今日は毎年恒例、住良木さんの誕生日。普段何かと口うるさい私もこの日ばかりは住良木さんの好きなようにさせていた。
今回は横浜で私たちが開発に関わった新型分析機器のプレス発表があったので、そのまま近場のホテルに宿泊することにした。オフィシャルな場所で今日は一日、格好つけっぱなしだったけど背筋が伸びてたまにはいいかも。
それに住良木さんの隣にいると後光に与れるのか、今日は色んな人に「お綺麗ですね」って褒められちゃったし。鏡に映る自分の、光沢のあるグレーのワンピースに黒のジャケットを合わせたフォーマルな装いに惚れ惚れする。
それにしても、奇しくもハイ〇ットに宿泊することになるとはね。二年前、セクハラ教授に同系列のホテルに誘われたあの日が走馬灯のように蘇る。
思えばあの日から全てが始まったんだ。住良木さんとの関係も笠井君との恋も私の研究者としてのキャリアも――。
「奮発した甲斐あったなぁ」と一人満足気にシャンパンを開けて、窓辺に腰掛ける住良木さんを微笑ましく見守る。今日は彼もスーツ姿だ。今回はホストのようにならないように白いワイシャツにダークグレーの細身のスーツ。ネクタイも私が選んだ臙脂の上質なものにしたからちゃんと研究者に見える、と思う。住良木さんも一日気合を入れっぱなしで疲れたみたいで髪を解いてジャケットを脱いで寛ぎ始める。
ほんと不思議な縁だ。二年前、ラブホテルで酒池肉林のような真似をしたことも今は懐かしい。私は今、この人と将来を誓い合って、こうしていつも二人で過ごしている。
「住良木さん、私、お風呂入ってきますから」
私は大きなビジューの付いたピアスを外しながら住良木さんに話しかける。相変わらず全然ムードないな、私たち。いよいよ住良木さんが我が家に引っ越してきたこともあって、私たちは中年夫婦みたいな成熟した雰囲気を醸し出すようになっていた。
「おい、なんか俺に言うことはないか?」
支度を整えてお風呂に向かおうとする私に窓辺の住良木さんから声がかかる。長髪をそのままに寛いだ白いワイシャツ姿でシャンパングラス片手に夜景を背負っている彼は正にゴージャスという言葉がぴったりだった。
――ああ、はいはい、そういうことね。プレゼントのほかにも欲しいものがあるってことだ。この感じにも大分慣れてきた。このラグジュアリーでハイクラスの大男は意外とロマンチストだ。
「住良木さん、じゃなかった皐月さん。お誕生日おめでとうございます。えーと、これからも健康で日々研究に励んでください。あと食べた後のお皿を下げるのを忘れないように」
私はそう言って軽くキスをする。「なんだそれ、年寄か」と住良木さんは不満そうに口を尖らす。ふふ、可愛い。思わず私が住良木さんの顔を胸でそっと包み込むと「うわっ」と住良木さんが嬉しそうな声を上げた。
「あと、ずーっと一緒に歳をとりましょう。これからもよろしくお願いします」
ふうっと安心したように住良木さんが私の胸に体重を預ける。うーん、可愛いな。クールなイケメンなのにこんなに私に懐いているなんて。
* * *
シャワーを浴びて当然の如くゆるゆるとベッドの中で肌を合わせる。
慣れ親しんだ住良木さんの真っ白な陶磁器のような肌。この肌に触れるのはヨガとか瞑想とかそういうのに似ている気がする。決まった相手との絶対的な安心感の中で行われるセックスは快楽の追求というよりもリラクゼーションに近い行為のように思えた。
「――ううっ、あっ」
慣れているとはいっても住良木さんはいつも的確に私を頂点に昇らせる。いつもの手順でいつものように愛撫を受けているだけなのに、毎度、馬鹿みたいにあっさりと達してしまう。
「あっ、もうイッてます、あっ」
すでに達しているのに、住良木さんが蕩けた中を指で掻き混ぜ続ける。「――いっ」と短い喘ぎ声を上げて、愉悦の中、もう一度果てる。
「はっあぁ……」
ああ、気持ちよかった。この後は大体、住良木さんがゴムを着けるので短いインターバルがある。私はいつもこのじんわりとした熱が残る身体を抱えて、うっとりとその時を待つ。
――ん? 住良木さんがインターバルを空けずにあの体勢に入る。足の間に彼の巨大なものがぴたりと当たる。
――え? ちょっと待って?! 避妊してなくない?!
「ちょ!! 何してるんですか、住良木さん!! ゴムは?!」
「――ない」
はあ?! 何言ってるんだ、この男は。今までいつもちゃんと避妊していたくせに、今日いきなりどうしたっていうんだ。
「ないって、いつも持ってたじゃないですか。忘れてきたんですか? コンビニで売ってますよ」
私は正常位の体勢をとったまま足を閉じて何とか抵抗している。何なの、この人は。住良木さんが何を考えているのか全然わからない。
「忘れてないし別に必要ない。子ども作るぞ、相川」
――はあ?! 何言ってるんだ、住良木さん。なんでいきなりそうなるの。
「ちょ! ちょっと待ってください!! まず前提として私たちまだ結婚してませんよね? それはまずいんじゃないですか!!」
私は全裸のまま足を閉じて抵抗する。何とか逃れようと住良木さんの身体の下でずりずりと後ずさりする。
「うるせえ。別にいいだろうが。さっさと作るぞ。足開け」
はあぁ?! 何言ってんだ住良木さん。事故に遭って、おかしくなっちゃったんじゃないの。
「嫌ですよ! そんな同意もなしに子作りだなんて! 女性蔑視です!! こんなの一種の暴力ですよ!!」
私は住良木さんの身体の下で暴れ出す。手やら足やらが住良木さんの身体にびしびしと当たって「いてぇな、くそがっ」と住良木さんが仕方なく離れる。マジで危なかった。何なんだ、この人。
ホテルの部屋に入るなり、目に飛び込んでくる煌びやかな夜景に住良木さんがはしゃぐ。私はその後ろから黙って続いて入り、サイドテーブルにハンドバッグを置く。
今日は毎年恒例、住良木さんの誕生日。普段何かと口うるさい私もこの日ばかりは住良木さんの好きなようにさせていた。
今回は横浜で私たちが開発に関わった新型分析機器のプレス発表があったので、そのまま近場のホテルに宿泊することにした。オフィシャルな場所で今日は一日、格好つけっぱなしだったけど背筋が伸びてたまにはいいかも。
それに住良木さんの隣にいると後光に与れるのか、今日は色んな人に「お綺麗ですね」って褒められちゃったし。鏡に映る自分の、光沢のあるグレーのワンピースに黒のジャケットを合わせたフォーマルな装いに惚れ惚れする。
それにしても、奇しくもハイ〇ットに宿泊することになるとはね。二年前、セクハラ教授に同系列のホテルに誘われたあの日が走馬灯のように蘇る。
思えばあの日から全てが始まったんだ。住良木さんとの関係も笠井君との恋も私の研究者としてのキャリアも――。
「奮発した甲斐あったなぁ」と一人満足気にシャンパンを開けて、窓辺に腰掛ける住良木さんを微笑ましく見守る。今日は彼もスーツ姿だ。今回はホストのようにならないように白いワイシャツにダークグレーの細身のスーツ。ネクタイも私が選んだ臙脂の上質なものにしたからちゃんと研究者に見える、と思う。住良木さんも一日気合を入れっぱなしで疲れたみたいで髪を解いてジャケットを脱いで寛ぎ始める。
ほんと不思議な縁だ。二年前、ラブホテルで酒池肉林のような真似をしたことも今は懐かしい。私は今、この人と将来を誓い合って、こうしていつも二人で過ごしている。
「住良木さん、私、お風呂入ってきますから」
私は大きなビジューの付いたピアスを外しながら住良木さんに話しかける。相変わらず全然ムードないな、私たち。いよいよ住良木さんが我が家に引っ越してきたこともあって、私たちは中年夫婦みたいな成熟した雰囲気を醸し出すようになっていた。
「おい、なんか俺に言うことはないか?」
支度を整えてお風呂に向かおうとする私に窓辺の住良木さんから声がかかる。長髪をそのままに寛いだ白いワイシャツ姿でシャンパングラス片手に夜景を背負っている彼は正にゴージャスという言葉がぴったりだった。
――ああ、はいはい、そういうことね。プレゼントのほかにも欲しいものがあるってことだ。この感じにも大分慣れてきた。このラグジュアリーでハイクラスの大男は意外とロマンチストだ。
「住良木さん、じゃなかった皐月さん。お誕生日おめでとうございます。えーと、これからも健康で日々研究に励んでください。あと食べた後のお皿を下げるのを忘れないように」
私はそう言って軽くキスをする。「なんだそれ、年寄か」と住良木さんは不満そうに口を尖らす。ふふ、可愛い。思わず私が住良木さんの顔を胸でそっと包み込むと「うわっ」と住良木さんが嬉しそうな声を上げた。
「あと、ずーっと一緒に歳をとりましょう。これからもよろしくお願いします」
ふうっと安心したように住良木さんが私の胸に体重を預ける。うーん、可愛いな。クールなイケメンなのにこんなに私に懐いているなんて。
* * *
シャワーを浴びて当然の如くゆるゆるとベッドの中で肌を合わせる。
慣れ親しんだ住良木さんの真っ白な陶磁器のような肌。この肌に触れるのはヨガとか瞑想とかそういうのに似ている気がする。決まった相手との絶対的な安心感の中で行われるセックスは快楽の追求というよりもリラクゼーションに近い行為のように思えた。
「――ううっ、あっ」
慣れているとはいっても住良木さんはいつも的確に私を頂点に昇らせる。いつもの手順でいつものように愛撫を受けているだけなのに、毎度、馬鹿みたいにあっさりと達してしまう。
「あっ、もうイッてます、あっ」
すでに達しているのに、住良木さんが蕩けた中を指で掻き混ぜ続ける。「――いっ」と短い喘ぎ声を上げて、愉悦の中、もう一度果てる。
「はっあぁ……」
ああ、気持ちよかった。この後は大体、住良木さんがゴムを着けるので短いインターバルがある。私はいつもこのじんわりとした熱が残る身体を抱えて、うっとりとその時を待つ。
――ん? 住良木さんがインターバルを空けずにあの体勢に入る。足の間に彼の巨大なものがぴたりと当たる。
――え? ちょっと待って?! 避妊してなくない?!
「ちょ!! 何してるんですか、住良木さん!! ゴムは?!」
「――ない」
はあ?! 何言ってるんだ、この男は。今までいつもちゃんと避妊していたくせに、今日いきなりどうしたっていうんだ。
「ないって、いつも持ってたじゃないですか。忘れてきたんですか? コンビニで売ってますよ」
私は正常位の体勢をとったまま足を閉じて何とか抵抗している。何なの、この人は。住良木さんが何を考えているのか全然わからない。
「忘れてないし別に必要ない。子ども作るぞ、相川」
――はあ?! 何言ってるんだ、住良木さん。なんでいきなりそうなるの。
「ちょ! ちょっと待ってください!! まず前提として私たちまだ結婚してませんよね? それはまずいんじゃないですか!!」
私は全裸のまま足を閉じて抵抗する。何とか逃れようと住良木さんの身体の下でずりずりと後ずさりする。
「うるせえ。別にいいだろうが。さっさと作るぞ。足開け」
はあぁ?! 何言ってんだ住良木さん。事故に遭って、おかしくなっちゃったんじゃないの。
「嫌ですよ! そんな同意もなしに子作りだなんて! 女性蔑視です!! こんなの一種の暴力ですよ!!」
私は住良木さんの身体の下で暴れ出す。手やら足やらが住良木さんの身体にびしびしと当たって「いてぇな、くそがっ」と住良木さんが仕方なく離れる。マジで危なかった。何なんだ、この人。