アオハル×フラグ=恋。
   *


旧校舎へ向かう渡り廊下は、
やけに静かだった。


さっきまで賑やかだった校舎の声が、
少しずつ遠くなっていく。


「……なんか急に静かじゃない?」

里穂は落ち着かない様子で辺りを見る。

蒼「そう?」

「そうだよ! なんか空気違うし!」

蒼「へぇ、西尾そういうの気にするタイプなんだ」

「しないけど!?」

蒼は面白そうに笑う。


絶対遊ばれてる。


渡り廊下を抜けると、
そこには古びた校舎があった。


少し色の褪せた壁。

古い窓。

錆びた手すり。


現校舎と比べると、
時間が止まったみたいだった。


「うわぁ……」


里穂は思わず声を漏らす。


蒼「めっちゃテンション上がる」

「私は下がる」


ガラッ。


里穂は一番近くの扉を開ける。


中には古い机や椅子が並んでいた。

使われなくなった教材も、
端の方に積まれている。


窓から差し込む光の中で、
埃がふわふわ舞っていた。


「はい、見たね。帰ろう」

蒼「早くない?」


蒼は笑いながら、
教室の奥へ歩いていく。


「ちょっ、勝手に行かないで!」


里穂も慌てて後を追う。


その時。


カタン。


「ひゃっ!?」


突然、
奥の方で音がした。


里穂は反射的に蒼の制服を掴む。


数秒の沈黙。


そして。


棚から
一匹の猫が飛び降りた。


「あ……猫」


猫は二人を見ると、
何事もなかったみたいに窓から出ていく。


蒼「……怖いの平気なんじゃなかった?」

「これはびっくりしただけ!」


里穂はすぐ手を離す。


でも。


蒼「いや、めっちゃ掴んでたけど」


口元を押さえて笑っている。


「うるさいっ」


恥ずかしい。


その時。


蒼「あれ」


蒼が、教室の後ろを見て立ち止まる。


「ん?」


そこには、
古い木の棚があった。


そして棚の隙間から、
少しだけ白い紙が見えている。


蒼「なんか挟まってる」

「え?」


蒼は棚へ近づき、
その紙をゆっくり引き抜いた。


少し黄ばんだ封筒。


表には、
何も書かれていない。


旧校舎の静かな空気の中で。

二人は、
その封筒を見つめていた。
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