アオハル×フラグ=恋。
「……恋?」


愛華に言われた言葉が、
頭の中で何度も反芻する。


恋。


どんな教科より、
里穂には分からないもの。


人を好きになるって、
どういうことなんだろう。


「いやいやいや……」


里穂はぶんぶん首を振る。


「そんなわけ……」


顔が熱い。


「だいたい誰に恋してるのよ……」


愛華は呆れたみたいに笑った。


愛華「本当は気づいてるくせに」


菜々子「平井くんに決まってるじゃん」


「っっ!!」


里穂は一気に顔を赤くする。


「そ、そんなわけないって!」


慌てて否定する。


「だってまだ出会って十日も経ってないんだよ!?」

「LINEだって知らないし!」


愛華「そこが怖いとこなんだよ」


春風が吹く。


愛華「恋って、時間じゃないんだ」


「えっ……」


愛華は空を見上げながら続ける。


愛華「愛を育むには時間がいる」


愛華「でも、恋するのは一瞬なんだよ」


一瞬。


その言葉が、
胸へ落ちてくる。


菜々子「名言すぎる」

好桜「愛華ちゃんかっこいいです〜!」


好桜は、
ぱちぱち拍手している。


「いや、でも……」


里穂は胸元を押さえる。


「こんな気持ち、今までなったことないし……分からない」


愛華「分からなくていいんだよ」


愛華は真っ直ぐ里穂を見る。


愛華「ただ、転校生に対して」


愛華「今まで男子に思ったことない感情、あるんだろ?」


ドクン。


胸が跳ねる。


愛華「例えば、平井を見たらドキドキするとか」

愛華「目が合うと逸らしちゃうとか」


「……っ」


図星だった。


昨日の古本屋。

何度も蒼を見てしまった。


目が合うたび、
逃げたくなるくらい恥ずかしくなった。


「……う、うん」


小さく頷く。


菜々子「LINE知りたいとか!」

好桜「もっとお話したいとか!」

菜々子「妙に気になるとか!」

好桜「ずっと考えちゃうとかぁ!」


全部。


全部図星だった。


里穂の顔が、
どんどん赤くなっていく。


今にも煙が出そう。


愛華「そういうことなんだよ」


愛華は少しだけ優しく笑った。


愛華「会いたいとか」

愛華「話したいとか」

愛華「触れてみたいとか」


春の陽射しが、
四人を照らす。


愛華「そいつに、今まで持ったことない興味を持つ」


愛華「胸がドキドキする」


愛華「それが、“恋する”ってことなんだ」


里穂は、
蒼の顔を思い出す。


助けてくれた時の顔。

古本屋で笑った顔。

『絶対守るよ』

って言った時の顔。


思い出すたび。


胸の音が、
どんどん大きくなる。


「……これが、恋?」


ぽつりと漏れる。


春らしい陽射しが降り注ぐ、
昼休みの屋上。


里穂は、
ニヤニヤ笑う三人に囲まれながら。


自分が恋をしているのかもしれないと、
初めて気づかされた。
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