アオハル×フラグ=恋。
   *


「嘘でしょ……」


里穂は、
げんなりした顔で下駄箱の入口に立っていた。


────ザザザァァッ!!


外は、
昼間とは打って変わって土砂降りだった。


バケツをひっくり返したみたいな雨。


もちろん。


傘なんて持ってきてない。


「……終わった」


里穂は立ち尽くす。


しかも。


二日連続で、
愛華も菜々子も好桜も用事があるとの事で


完全に一人。


「……よしっ」


里穂は覚悟を決めたように、
鞄を頭へ乗せる。


ダッシュで帰れば、
なんとか——。


蒼「走って帰るつもり?」


「ほえっ!?」


突然隣から声がして、
里穂は飛び上がる。


気づけば、
蒼がすぐ横に立っていた。


蒼「いや、チャリで来る距離走るの無謀すぎない?」


「だ、だってぇ……」


里穂は情けない声を出す。


蒼は小さく笑うと、
持っていた傘を差し出した。


蒼「ほら、これ使えよ」

「えっ!?」


里穂は目を丸くする。


「いやいやダメだよそんな!」


慌てて押し返す。


蒼「いいって」


蒼は半ば無理やり、
里穂へ傘を持たせた。


蒼「早く帰りたい理由あるんだろ?」

蒼「使えって」


「……ほんとにいいの?」


おずおずと見上げる。


蒼「もちろん」


蒼は優しく笑った。


蒼「気をつけて帰れよ」


そう言って、
軽く手を振る。


「……平井くん、ありがとう」


里穂は小さく頭を下げる。


そして。


傘を開いた。


一歩。

二歩。


歩き出して。


里穂は思う。







知りたい。







もっと話したい。








もっと一緒にいたい。










────それが、恋。




気づいた瞬間。


里穂の胸が、
ぎゅっと締め付けられる。


そして。


「……あのっ!!」


里穂は振り返った。


構内へ戻ろうとしていた蒼が、
足を止める。


「平井くんっ!!」


蒼が振り返る。


「いっ、いいいいっ……!」


心臓がうるさい。


顔が熱い。


「い、一緒に入りませんかっ!!」


なぜか敬語になった。


言った瞬間。


「〜〜〜っ!!」


里穂は自分で自分の顔が熱くなるのを感じた。


蒼は一瞬止まる。


でも。


すぐに、
少し顔を赤くしながら聞き返した。


蒼「……い、いいのか?」


里穂は、
小さく頷く。


やばいやばいやばい。


心臓が、
爆音で鳴ってる。


蒼も少しぎこちない。


微妙に距離を空けながら、
そっと傘へ入る。


蒼「……俺が持つよ」

「う、うん」


蒼が傘を持つ。


二人は、
壊れかけのロボットみたいにぎこちなく歩き出した。


蒼「……ありがとう」

「……うん」


雨音が、
二人を包む。


突然の大雨が


二人の距離を、
少しだけ縮めていた。


   *


菜々子「りほりほぉぉぉぉ!!! うほおおおおおおおおお!!!!」

好桜「愛華ちゃん愛華ちゃん!! なんですかあの尊い生物は!!」

愛華「……頑張ったなぁ、里穂」


三人は、
校舎の窓からこっそり覗いていた。


好桜「大成功ですねぇ!!」

菜々子「まさかだったわ!! 里穂から言うなんて!!」


二人とも大興奮。


愛華は窓へ頬杖をつきながら、
並んで歩く二人を見る。


愛華「……はぁ」


小さく笑う。


愛華「ほんと、世話の焼ける幼なじみだわ」


そう言って。


愛華は、
どこか嬉しそうに笑った。
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