アオハル×フラグ=恋。
   *


さっきまでの土砂降りが嘘みたいに、
雨足は少しずつ弱まっていた。


ぽつ、ぽつ、ぽつ、と。

静かな雨音だけが響く。


蒼は、
絶対に里穂へ触れないように、
ほんの少しだけ距離を空けて歩いていた。


校門を出てから。


まだ、
まともな会話がない。


でも。


蒼は、
会話なんてどうでもいいくらい嬉しかった。


傘を貸した時。

一緒に入ろうって言われた時。

顔を真っ赤にしてた時。


全部。


全部可愛すぎる。


心臓が、
ずっと壊れそうなくらい鳴っていた。


しかも。


近い。


近すぎる。


ふわっと香る、
里穂のシャンプーの匂い。


それだけで、
余計に心臓が跳ねる。


やばい。


なんか話さないと。


なにか、
なにか話題——。


……思いつかねぇ。


蒼が内心パニックになっていた時。


「あっ、昨日はありがとね!」


突然、
里穂が口を開いた。


蒼「えっ!?」


思わず変な声が出る。


「ほ、ほら……!」


里穂は少し恥ずかしそうに視線を逸らす。


「守ってくれたやつ……」


蒼「……お、おう」


ぎこちない。


びっくりするくらいぎこちない。


「飛び出して行っちゃって、ごめんね」


昨日の古本屋。


顔真っ赤にして逃げたやつだ。


蒼「……ちゃんと帰れた?」


「うん」


里穂は小さく頷く。


「あの人たちもいなくなってた」


蒼「そっか」


小さく息を吐く。


蒼「……良かった」


その声が、
思ってたより優しかった。


そして。


少し間を空けて。


里穂はぽつりと言った。


「……守るって言ってくれたの」


蒼が、
ちらっと里穂を見る。


里穂は前を向いたまま、
少しだけ傘を握る手に力を入れていた。


「……嬉しかった」


昨日から、
ずっと伝えたかった言葉。


助けてくれたこと。


怖かった時、
来てくれたこと。


そして。


“守る”って言ってくれたこと。


全部。


嬉しかった。


蒼は、
少しだけ目を見開く。


雨音だけが、
静かに響いていた。
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