アオハル×フラグ=恋。
委員会が決まった日から、一ヶ月が経った。

季節は七月。

梅雨も終わりに近づき、窓の外では蝉が鳴き始めている。

そして。

里穂と蒼の距離も、少しずつ変わっていた。

いや。

正確には。

離れてしまっていた。


最初は仕方ないと思っていた。

体育祭実行委員なんだから忙しい。

朝早く集まる日もある。

放課後だって残ることがある。

実際、蒼からもLINEが来た。

『ごめん。最近朝早くから委員会ある日増えそう』

『登校一緒に出来ない日あると思う』

里穂は、

『うん!頑張って!』

と返した。

本当は少し寂しかったけど。

そんなこと言える立場じゃないと思った。


けれど。

問題はそこじゃなかった。


蒼と同じ委員会になった女子。

倉田 詩音

その子は思った以上に積極的だった。


「平井くーん!」

「ねぇねぇこれ見て!」

「一緒に運ぼー!」


委員会を理由にいつも蒼の隣にいる。

距離も近い。

肩を叩く。

腕を引っ張る。

自然と身体に触れる。


蒼も嫌そうにはしていない。


それを見るたび。

里穂の胸はチクリと痛んだ。


そして。


一番辛かったのは。


蒼との会話が減ったことだった。


蒼は変わっていない。


むしろ前より気にかけてくれている。


蒼「おはよ」

蒼「昨日の宿題やった?」

蒼「今日暑くね?」


今まで通り話しかけてくれる。


なのに。


里穂は上手く返事が出来ない。


「うん」

「そうだね」

「別に」


気づけばそんな返事ばかりになっていた。


本当は違う。


もっと話したい。

もっと笑いたい。

もっと隣にいたい。


でも。


蒼の隣には。


もう別の子がいる気がして。


怖かった。


だから逃げてしまう。


そんな自分が嫌だった。


好桜「里穂ちゃん、元気ないですねぇ」


昼休み。


いつもの四人。


好桜が心配そうに顔を覗き込む。


菜々子は窓の外を見ながらため息を吐いた。


菜々子「そりゃあなぁ」


その視線の先。


体育祭実行委員の打ち合わせをしている蒼たち。


詩音が蒼の隣で楽しそうに笑っている。


菜々子「まぁ、あんだけグイグイいかれるとねぇ……」


少し不機嫌そうな声だった。


愛華も黙ってその様子を見ている。


「あの子が悪いわけじゃないからさ……」


里穂は小さく言った。


菜々子が振り返る。


「だって……」


里穂は苦笑した。


よく分かるから。


あの子の気持ち。


蒼の特別になりたい。


もっと話したい。

もっと近づきたい。


私だって同じだから。


だから。


責められない。


責める資格なんてない。


里穂は自分の気持ちに無理やり蓋をする。


仕方ない。


蒼はモテる。


最初から分かっていたことだ。


私なんかより。


ああいう明るくて積極的な子の方が。


きっと。


蒼にはお似合いなんだろうな。


そんなことを考えてしまう。


考えたくないのに。


里穂は窓の外を見る。


蒼が笑っている。


その隣には詩音がいる。


楽しそうだった。


里穂は視線を落とした。


胸が苦しい。


でも。


その苦しさを誰にも言えない。


ただ。


遠くから見つめることしか出来なかった。
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