アオハル×フラグ=恋。

止まらない想い

体育祭まで残り二週間。

校内はどこも慌ただしかった。

委員会ではない生徒たちも準備に駆り出されるようになり、放課後はあちこちで作業をしている。


そんな中、里穂も先生に呼び出されていた。


先生「西尾ー」

「はい?」

先生「悪いけど手伝ってくれ」

「わかりました」

先生は申し訳なさそうに頭を掻く。

先生「体育祭で使うゲートの補修なんだけどな」

「まぁ、いいですけど」

先生「あと一人欲しいんだが……」


先生は教室を見渡す。


「じゃあ俺やります」


手を挙げたのは男子だった。


里穂と同じクラスの男子。


花宮 蓮(ハナミヤ レン)


明るくて誰とでも話せるタイプ。


好桜とはよく話している。


先生「助かる!」

花宮「西尾さんだけじゃ大変そうですし!」


そう言って笑う。


「ありがと」


里穂も少し笑った。


   *


放課後。

体育館裏。


そこで二人は補修作業をしていた。


「それそっち持って!」


佐伯「はいはい」


「ちがっ!逆!」


佐伯「あっ」


ガコンッ


「もーーー!!!」


里穂が頭を抱える。


それをよそに佐伯は大笑いしている。


「笑い事じゃないんだけど!」


花宮「西尾さんって意外とポンコツですね」


「はぁ!?」


里穂は刷毛を振り回す。


花宮は慌てて逃げる。


二人とも笑っていた。


ここ数日。


久しぶりに少しだけ笑った気がした。


蒼のことを考えなくて済む時間。


ほんの少しだけ。


胸が楽だった。


   *


一方。


体育祭実行委員の作業を終えた蒼は廊下を歩いていた。


委員会が終わると毎日里穂を探してしまう、自分が先に返っていいと言ったくせに。


最近まともに話せていない。
避けられている気もする。
理由は分からない。


LINEも未読。


話しかけてもそっけない。


蒼「はぁ……」


ため息が漏れる。


その時だった。


窓の外。


体育館裏。


見慣れた姿が見えた。


里穂。


そして、


その隣には男子。


楽しそうに笑っている。


花宮「西尾さん、めっちゃペンキついてますよ笑」

「えっ?」

佐伯「ほら」

「うわっ、ほんとだ!」


二人が笑う。楽しそうに。


蒼は立ち止まる。


なんだよそれ。


胸の奥がざわつく。


ここ一週間、自分にはまともに笑わないくせに、そいつにはそんな顔するんだ。


蒼は無意識に拳を握る。


里穂が笑う。


また笑う。



胸の奥が熱くなっていった。




   *


程なくして何とか作業が終わった、


「ふぅーーー」


里穂は大きく伸びをする。


花宮「お疲さま、西尾さん」


「ありがとー、助かった」


花宮「ジュース奢ってくださいね」

「立候補したの自分じゃん調子乗るな」


二人は笑う。


その時。


「里穂」


低い声。聞き慣れた声。



なのに里穂の身体が固まる。


振り返と、蒼が立っていた。


「……なに」


思わず声が硬くなる。


蒼は何も言わない。


ただ。


花宮を見る。
そして里穂を見る。


その目が少し怖かった。


花宮「蒼くん?」


蒼「悪い」


次の瞬間。


蒼は里穂の手首を掴んだ。


「えっ」


蒼「ちょっと来て」


「ちょ、ちょっと!」


花宮も驚く。


蒼は止まらない。


そのまま歩き出す。


「蒼っ!」


掴まれた手が熱い。


蒼は振り返らない。


廊下を進む。


階段を曲がる。


どんどん進む。


そして。


────体育倉庫。


ガラッ。


扉が開く。


里穂はそのまま中へ引っ張られた。


バタン。


扉が閉まる。


薄暗い体育倉庫。


二人きり。


里穂の心臓が大きく跳ねた、蒼は黙ったまま。


里穂を見る、その表情は里穂が今まで見たことがないくらい、余裕がなかった。
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