アオハル×フラグ=恋。
蒼に突き飛ばされた里穂は、体育倉庫の外まで投げ出されていた。

「いたたたた……」

尻もちをついたまま顔を上げる。

何が起きたのか分からない。

ほんの数秒前まで蒼と口論していたはずなのに。

里穂はお尻をさすりながら体育倉庫を見る。

そして、固まった。

「……え?」

蒼が、動かない。

倒れた棚の下。

額から血が流れていて、赤い血が床へ広がっていく。

「え……」

頭が真っ白になる。

理解が追いつかない。

蒼が。

血を流している。

蒼が。

動かない。

「蒼……?」

震える声。

返事はない。

里穂は慌てて立ち上がる。

足が震える。

上手く歩けない。

それでも蒼の元へ駆け寄った。

「蒼?」

肩を揺するが反応はない。

「蒼っ!」

もう一度。

強く揺する。

動かない。
目も開かない。




「ねぇ!!」

声が裏返る。

「蒼!!」

どれだけ呼んでも。

返事は返ってこなかった。

里穂の呼吸が乱れる。

心臓が嫌な音を立てる。

さっきまで普通に話していたのに。

怒っていたのに。掴み合っていたのに。

どうして。

どうしてこうなったの。

その時だった。

「どうした!?」

先生の声が聞こえる。

大きな音を聞きつけたのだろう、先生が走ってくる。

後ろから生徒たちもぞろぞろと集まってくる。

先生は体育倉庫の中を見るなり顔色を変えた。

「おい!!」

先生が駆け寄る。

「平井!!」

蒼の脈を確認する。

周囲が一気に騒がしくなる。

「すごい音したぞ!」

「何があったんだ!?」

「血出てる!」

「救急車!!」

「早く!!」

叫び声が飛び交う。

誰かが走り出す。

誰かが携帯を取り出す。

先生たちが蒼の周りに集まる。

けれど。

里穂だけは動けなかった。

呆然と立ち尽くす。

視線の先には。

血を流したまま動かない蒼。

そして脳裏に浮かぶ。

ほんの数分前の会話。

『やめて!』

『もういいって!!!』

自分が振り払った手。

自分が向けた言葉。

胸が苦しくなる。

息が出来ない。

違う。

そんなつもりじゃなかった。

ただ。

少しだけ。

苦しかっただけなのに。

「蒼……」

小さく名前を呼ぶ。

当然返事はない。

その時。

救急車のサイレンが遠くから聞こえてきた。

その音を聞いた瞬間。

里穂の膝から力が抜ける。

その場に崩れ落ちた。

そして、初めて。

恐怖が涙になって溢れ出した。
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