アオハル×フラグ=恋。
里穂は蒼の言葉を聞いて胸を撫で下ろす。

ずっと胸の中を支配していた不安が、少しずつ溶けていく。


蒼「俺が詩音と付き合ったら、里穂は素っ気ない態度とるの?」


蒼は意地悪そうな笑みを浮かべる。


「い、いや、別に!」


里穂は慌てて顔を逸らした。


蒼「嫉妬した?」


さらに追い打ちをかけるような質問。


里穂は少しだけ俯く。


そして。


正直に答えた。


「めちゃくちゃした……」


蒼「えっ?まじ?」


蒼は目を丸くする。

怒られると思っていた。

呆れられると思っていた。

だから予想外の返事に焦る。


「した。」


里穂は小さく頷く。


「詩音さんと蒼が付き合ったらどうしようって毎日考えてた。」


蒼「ちょ、里穂?」


「蒼との関係が壊れたくなくて、先に進めない私を尻目に。」


「詩音さんはグイグイ蒼にアタックして。」


「一歩前に進めない自分が嫌だった。」


蒼「ちょ、待って、里穂」


けれど。

一度決話出した気持ちはもう止まらない。


今まで押し込めていた感情が、言葉になって溢れ出していく。


「蒼がいつの間にか特別な存在になってて。」


「いつも一緒にいたい。」

「話していたい。」

「触れていたい。」


里穂の目から涙が溢れる。


「好きが何か分からなかったけど。」


「そんな私でもさすがに分かるよ。」


「これがどういう気持ちなのか。」


里穂は蒼を見つめる。


「私、蒼のことがすっ────」


蒼「ちょっと待ったぁぁぁぁぁ!!」


蒼は慌てて里穂の口を塞いだ。


「もががっ!?」


蒼「おい!勢いに任せてとんでもないこと言おうとしてない!?」


蒼の方が真っ赤になっている。


「なによ!」


里穂は蒼の手をどかす。


「私の気持ちは決まってるんだから!」


蒼「いや、待て、里穂。」


「なんでそんなに止めるの?」


里穂の声が少し震える。


「やっぱり私じゃ蒼の彼女にはなれない?」


その言葉に蒼の表情が変わる。


蒼「違う。」


真っ直ぐな声。


蒼「そうじゃない。」


蒼はまっすぐ里穂を見る。


蒼「俺から言うつもりだった。」


「えっ……」


里穂の瞳が揺れる。


蒼「愛華から聞いてたんだ。」


「里穂が好きって気持ちがどういうものか分からないこと。」


「男子に傷つけられたことがあること。」


蒼は少し照れたように笑う。


蒼「だから、もっとゆっくり距離を縮めていければって思ってた。」


里穂の目からまた涙が溢れる。


蒼はずっと考えてくれていた。


自分のことを。


ずっと。


蒼「それに。」


蒼は少しだけ視線を落とす。


蒼「他の男子みたいに断られるのも怖かった。」


里穂は目を見開く。


そんなこと。


考えたこともなかった。


蒼だって怖かったんだ。


自分と同じように。


蒼「けど。」


蒼はもう一度里穂を見る。


その瞳は真っ直ぐだった。


蒼「やっぱり気持ちを伝えさせてください。」


病室が静かになる。


聞こえるのはお互いの呼吸だけ。


蒼は里穂に向き直る。


そしてしっかりと里穂を見つめた。


蒼「里穂のこと、どんなことがあっても守り抜きます。」


蒼の心臓が大きく鳴る。


蒼「好きです。」


一呼吸。


蒼「付き合ってください。」


静かな病室。


時間が止まったようだった。


「ほんとに……?」


里穂の声が震える。


「ほんとに私でいいの?」


蒼「里穂しか嫌だ。」


即答だった。


蒼「ごめん。」


蒼「里穂のこと悩ませて、傷つけた。」


蒼「それでも里穂が良ければ。」


蒼「俺と付き合って欲しい。」


里穂の頬を涙が伝う。


次から次へと。


止まらない。


「わたっ……」


声にならない。


「わたひもぉ……」


涙でぐしゃぐしゃになりながら。


必死に言葉を絞り出す。


「あっ、あおいのこと、すきぃ……」


嗚咽混じりの告白。


それでも。


蒼には十分すぎるほど伝わった。


蒼は思わず笑う。


そして。


どうしようもないくらい愛おしくなる。


蒼「ま、まじ?」


「ゔん……」


里穂は泣きながら頷く。


何度も。

何度も。


その姿を見て。


蒼の胸の奥も温かくなっていった。
< 41 / 56 >

この作品をシェア

pagetop