演技派女優に本気で恋をしてしまった社長の誤算
「今日は宜しくお願いします」

俺がそう言うと伊藤萌奈は笑顔を見せた。

「精一杯頑張ります」

初めて会った時と同じ笑顔。

俺はその笑顔に、癒されていた。

「では、リハーサルいきます」

スタッフの一人が彼女に声をかけた。

「では、後ほど」

「はい」

彼女は俺に背中を向けて、スタジオへと向かっていく。

そこには不思議な世界が広がっていた。

スタジオなのに、オフィスが広がっている。

彼女の白いシャツとベージュのパンツスタイルが、本当の会社員みたいだった。

「さすがは女優」

どんな役も衣装一つでなりきってしまうなんて。

稀有な仕事だと思った。

カメラの前で彼女は、精一杯の笑顔を振りまく。

それはあたかも、彼女が俺の会社で働いているかのようだった。

「では、本番行きます」

スタジオに緊張が走った。

辺りがシーンと静まり返る。
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