演技派女優に本気で恋をしてしまった社長の誤算
でも彼女は戸惑っている。

「その誤解、間違っていませんよ」

そう言うと彼女は、スマホを取り出して俺の連絡先を読み込んだ。

【 うそ 】

スマホの画面にその2文字が表示される。

【 嘘じゃない 俺は君に惹かれている 】

【 だったら、キスして 】

俺は彼女を見つめた。

伊藤萌奈は、ずっとスマホの画面を見ている。

キス?ここでキス?

タクシーの中だぞ。

【 やっぱりうそだったんでしょ 】

その文字がスマホに映し出された。

疑っている。

キスしない俺を、本気じゃないと疑っている。

伊藤萌奈は、俺の腕の中で待っている。

俺が彼女にキスするのを。

どうする?

俺は彼女を見つめた。

「萌奈」

名前を呼ぶと、彼女は振り向いた。

熟れた唇が、俺を誘っている。

でもここでキスしたら、彼女の思うつぼなのでは?

俺は彼女を抱きしめた。

「槙田社長……」
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