演技派女優に本気で恋をしてしまった社長の誤算
仕事が終わると、俺は意気揚々とジャケットを羽織った。

「あら、社長。今日はお早いお帰りで」

横田さんが驚くような目で見る。

「たまには定時で帰らないと」

尤もな意見を言ってみせた。

すると横田さんは、うふふと笑って見せた。

「デートですか?」

「え……」

何故か顔が赤くなった。

「いいじゃないですか。社長、まだ独身なんですから」

「あ、ああ……」

横田さんのニヤついた顔を横目に、俺はオフィスを出た。

もしかしたら、飲みに行くかもしれない。

俺は会社に車を置いたまま、彼女との待ち合わせ場所に向かった。

彼女が指定した場所は、街中からは少し外れた場所だった。

時計台の下と言っていたけれど、それらしき人はいない。

俺が周りをきょろきょろとすると、一人の女性が近づいてきた。

サングラスにマスク姿。

明らかに怪しい。

「社長、私です」

「え?もしかして萌奈?」

うんうん頷く彼女は、全く女優の雰囲気を消していた。
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