演技派女優に本気で恋をしてしまった社長の誤算
こうして隣に伊藤萌奈がいる事実が、俺の自尊心をくすぐった。

俺はメニュー表を見て、コース料理を頼んだ。

彼女とゆっくり話したかったからだ。

「仕事、上手くいってる?」

「はい、おかげさまで」

「そう。よかった」

何気ない会話の中で、料理が進む。

そしてデザートになると、彼女は俺の腕を掴んだ。

「帰りたくないな」

ドキッとした。

レストランの夜。そんなことを言われたら、勘違いしてしまう。

「明日は仕事ないの?」

「うん、休み」

彼女は静かに俺を見つめてくる。

帰りたくないだなんて、彼女は俺と一夜を過ごすつもりなのだろうか。

待て、待て。相手は伊藤萌奈だぞ?

そんなわけないだろう。

「萌奈」

俺は心を落ち着かせるように彼女の名前を口にした。

「今日は、甘えたい日なのかな」

そう言うと彼女は俺の腕から手を引いた。

「……あなたは私を買いかぶっているわ」

「え?」
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