演技派女優に本気で恋をしてしまった社長の誤算
「ここいいですか?」

「……どうぞ」

向いの席に座りコーヒーを飲むと、彼女の前に小さなパンが置いてあった。

「もしかして、お昼それだけ?」

「ええ、まあ」

よく見ると、彼女は細い体をしていた。

「それだけじゃ、足りないでしょ」

「確かにそうですけど」

目の前のパンを、噛み締めながら食べている。

「もっと食べたらいいじゃないですか」

「……太りたくないので」

「パン2個ぐらいじゃ、太らないですよ」

そう言うと彼女は、ふふっと笑った。

その笑顔がとても可愛らしかった。

「私、直ぐ太っちゃうので」

「へえ。太ったあなたも魅力的なんでしょうね」

そう言うと更に笑った。

その笑顔が、俺を捉えて放さなかった。

「社長さんは、お昼食べないんですか?」

「ああ、忘れてました」
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