余所者-よそもの-


「お前らならって賭けたんだ!紫藤に対抗できるって!なのに、紫藤の女を預かるだと!?腑抜け野郎どもが!お前らにはがっかりだ!こんなならわざわざ自分の危険を犯してまで紫藤に接触し——」


それはとても豪快な一撃だった。


奥に居たサンコンが、瓶や小物をなぎ倒しながらカウンターの上を飛び越えて。

あっという間にこちらまで走ってきたかと思えば、勢いそのまま頬を後ろから右ストレート。


残像が見えるくらい、一瞬でバンが床に落ちた。

ドォン、と頭が床に打ち付けられた音がフロアに反響する。


「あーあ。地雷踏みやがった…」


潤はそんな様を見ながら、もう知らないって風にテーブルに向かう。

その間にもうバンに跨ったサンコンが両腕を振りかぶり、3発はパンチを決めていた。


「ちょ…潤さん?止めないんですか!?」

「ん-」


うん、なのか、うーん、なのか。
どちらともとれる曖昧な返事をしながら、ユキの前に座る。

それなら、とユキを見るけれど。


「何?」

こちらも同じく素知らぬ顔。


なんで?
どうして?


私は今日、街でたくさんの非常識を目の当たりにしてきた。
これが街のルールだから、と。
巻き込まれないように、上手く生きなきゃいけないんだって。


でも、これはさすがに違うじゃない。


知り合いが知り合いに。
一方的に殴られてる。

これを止めることも『ワり』?


みんな、痛みを知らないのかな。
殴られたことがないのかな。


私は知ってる。

殴られるときって。
抵抗ができないときって。


――死にたくなるほど、つらい。


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