余所者-よそもの-
「だって、そうじゃねぇか!このシトウで商売するやつの大半は紫藤の下に付くのを、アンタはそうしなかった!それってつまり、何かやってやろうって思ってるんだろ!?」
「全然」
「嘘つけ!それならどうしてこの八賀のジジイのシマなんだ!まして露天街にもなりきれねぇこの死んだ通りで店やってんだ!」
ここはーー…AnBarは、そうなのか。
露天街からも、シトウからも離れたこの場所。
今日会った八賀さんは、このエリアのボスのようなもの?
バンは返事を待った。
ユキはまだ返さない。
「なぁ、言ってくれよ。俺、絶対誰にも言わない。ここで紫藤の目を搔い潜って、いつかなんかやるつもりなんだろ?」
「なるほどね」
ユキは何か納得がいったようだった。
一口吸った煙草を灰皿に押し付けて、立ち上がる。
「結論から言って、俺にそんな大層な野心はないよ」
「うそ、つけ」
「ないものはない。俺がここで商売をするのはシトウに振り回されたくなかったからだ。自分のしたいままに商売するために、何の利権も柵(シガラミ)もないここを選んだだけの話」
ユキは「ふ、」と自嘲すると、バンを見下す。
「紫藤に盾突く気のないヤツを『腑抜け野郎』って言うのなら、俺なんかはその最たるだ。関わる気がない。全くの読み違えだ馬鹿野郎」
それに「馬鹿はどっちだ」と嘆いたバンは、ダン、と拳を床に叩きつけ上体を起こす。
「関わる気がない?もう関わってんだろうが!」
そして、私をまっすぐに指差した。
「わからねぇのか!?八賀のジジイのシマでコソコソやるお前らの目付けに女が寄こされたんだろうが!監視だよ!監視!結局お前らだって紫藤に縛られてんだよ!」
「………」
「それに気づかず仲良しごっこか?紫藤の女にヘコヘコしやがって。どいつもこいつもキモいんだよ!」