余所者-よそもの-
慣れない手つき。
まだ修行中の身である私は、サンコンさんに見守られながらお酒を作る。
どうですか?という風にサンコンさんを見上げれば。
「………」
こちらの手元なんか見てなくて、代わりにユキさんの顔色を伺っていた。
「……え、もしかして言っちゃダメでした?」
ごめんなさい、と謝れば、サンコンさんは「ええ、まあ…はい」と苦そうに笑う。
「よく見てますね、カナコさん」
そりゃそうですよ。
だってサンコンさん、教えるの下手なんだもん。
なんてことは言えない。
私が言うのも何なんだけど。
サンコンさんは少しだけ抜けてると思う。
口調は丁寧だし、説明するときは情報量も多い。
だけど要点だったり重要なことがたまに抜け落ちるから、よく見ておかないと物分かりの悪い私は仕事を覚えることが出来ない。
お酒を出すと、ユキは「知らない間に薄い酒を出されてたことはさておき」と、グラスに浮いた氷を指で突く。
「やっぱり女の子っていいね。男と違ってすぐに使い物になる」
「私はバンくんと比べてしまうので余計にそう思いますよ」
「アイツは特に出来が悪かった気がするよ」
「基本指示したことしかしませんし、何より雑でしたね」
「でもあれはあれで客ついてたんだよな。年上から可愛がられるタイプだった」
すでに過去の人として語られるバン。
彼はあの日以来ここに顔は出していないし、サンコン曰くもう来ないだろう、とのこと。
私もそう思う。
あれだけ殴られれば、きっともう来ないだろう。