余所者-よそもの-
「看板出してきてもいいですか?」
「あと少しでオープン時間ですね。お願いします」
ちらりと時計を見たサンコンに了承をもらうと、まずはカウンター裏に置いてあるオーディオをオンにする。
控え目なBGMをかけてから、表に出た。
ここは一般的なclubとは少し違う。
音楽が大音量で鳴る日もあれば、今日みたいに控えめなBGMを流してお喋りを楽しむ日もある。
大体がお客さんの都合に合わせていた。
ある日サンコンに「ここはclubの日とBarの日があるんですね」と言ったら、
「AnBarは” AndBar ”の略ですからね。最初こそこちらの気分で切り替えてましたが、いつの間にかその日のお客さんの気分になってますね」
と教えてもらった。
そのため訪れるお客さんも親し気で馴染みのある人が多い。
新入りの私にだって優しくて、一緒にお酒を飲ませてもらったり、お酒の作り方だって教えてくれる人もいるくらい。
今までやってきた仕事とはまるで違う世界だけど、それがとても新鮮で。
今は何を覚えるのも楽しくて仕方がない時期。
充実ってこういうことかもしれない。