余所者-よそもの-
「な、帰ろう。みんな心配してるぞ?シュウジだって、モエだって」
彼は簡単に私たちの共通の友人の名前を呼ぶ。
一度抜け出したはずの世界が、息を吹きかえそうとしている。
「ちがう」
違う、そうじゃない。
私たちはやり直しが効かない。
「帰らない」
私はもう答えを見つけている。
「もう、別れたよ。私たち」
私がそう言うと、彼はバカにしたみたく鼻で笑った。
「別れてねぇよ」
「別れるって、言った」
「ただの冗談だろ?別れてねぇ。ほら、さっさと帰るぞ」
「嫌だ」
「今度こそ大事にする、お前のこと。傷つけねぇって約束するから」
「嘘だ」
「帰るぞ」
ぐ、っと引っ張られた腕を、振りほどく。
「帰らない」
「いい加減に、」
「絶対にかえ――」
キーンと耳鳴りがした。
ほら、言った傍から。
何が『大事にする』だ。
私は打たれた頬を確かめるように触れて、彼を睨み上げた。
ほら、あなたは繰り返す、と目で口ほどに物を言った。
でも、こんなことは無駄だとすぐに悟った。
だって彼には少しの罪悪感もない。
反抗する私に腹が立って仕方がない、って顔をして、ふるふると拳を丸めている。
「……待て!!!」
そう叫ぶ声を背中で聞いた。
私は彼から逃げた。
びしゃびしゃ、と雨水を跳ね上げて、人の行き交うシトウの中を縫うようにして逃げた。
「カナ!!」