余所者-よそもの-
怒号のような彼の声が鳴りやまない。
それでも私は脇目も振らず、一心不乱に走った。
濡れた顔に髪がぺたりと張り付く。
雨のせいで視界もかすむ。
それでも、私を呼ぶ声が聞こえなくなるまで。
シトウの街を闇雲になって駆け抜けた。
だから。
「いやっいやぁぁ…ッ」
突然掴まれた肩。
強制的に止められた足。
力ずく振りほどき、それでも捕えてくる。
「かぁこ」
だから誰が私の足を止めたのか。
呼ばれたその名前に気が付くことが出来るまで、少し時間がかかった。
「何してるの」
「ユキさん、私っ逃げなきゃ。放してッ」
パニックになる私に、ユキは後ろを見やる。
判断は早かった。
手前の細い路地。
肩を掴んだまま、車が通れない程度の路地に私を引きずり込み、右折。
さらに細い路地に入ると、建物と建物の間に私を押し込んだ。