余所者-よそもの-

どれくらいの時間が経っただろう。
きっと少しの間だったとは思う。

落ち着きを取り戻すと、今自分がどんな状況におかれているのかを自覚して、別の意味でドキドキする。


ユキさんに抱きしめられてる。

そう思うと顔だって熱くなってきた。



「そろそろいけるかな」

程なくユキは私を手放した。

ユキと離れると、顔に雨粒が当たる。

雨に降られていることを、すっかり忘れてしまっていた。
ユキが傘になってくれていたから。


ユキは濡れた髪をかきあげながら、辺りを見渡す。


「誰もいない。行こう」

そう言って私の顔を見るなり、眉をピクリと跳ねさせた。


「殴られたのか」

親指でそっと頬を撫でられると、さっきビンタされたことを思い出す。


服の袖をぎゅっと握った。

ここを出て、彼と鉢合わせしたらどうしよう。


「おいで」


けれど隣にはユキがいる。
それだけで不思議と大丈夫な気がした。


私はユキの後ろをついて歩いた。




< 143 / 276 >

この作品をシェア

pagetop