余所者-よそもの-


「男か」

「違うよ」

「男が出来たんだな?」

「できてない」

「なんで」

「ねえ、落ち着いて。話をしよう」


彼は今にも泣きだしそうな顔をする。
思い通りにならない私に、裏切られたって顔をする。


「なんでッ!!」


そう叫んで拳を振りかざし、覆いかぶさると私を組み敷く。

抵抗できないように私に跨って、二発、三発と殴る。


ここは道の往来だ。
たくさんの人が行き交う。

シトウは人の喧嘩には割り込まない。
日常茶飯事の風景。

誰も助けてはくれない。


それでも、彼は違ったのに。
以前の彼は、けして私を人目につくところで殴ったりはしなかった。


彼だってもうすっかりこのシトウの街に染まってしまったのか。


「この――裏切りモンが……!」


大きく身体を反らせ、振り上げられた拳。

ピタリと、宙で留まる。



「なんだ、お前」



彼の腕を片手に掴み、低く滑らかに延びる声。

シトウの街によく響く、威圧。


「なんかうるせぇと思って見にくりゃ、痴話喧嘩か?」


シドが私を見下ろし、答えろと言わんばかりに名前を呼ぶ。


「――なぁ、カナコ」


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