余所者-よそもの-
ふいに、周囲がやけに静かなことに気が付く。
朝日が昇る前。
薄暗い時間。
それでもシトウの中心に居残っていた賑やかさは、ここにない。
気がつけば、人通りの少ない場所に居た。
ゴミの散乱した道路は、露天街のような陰気臭さが漂っている。
「……おねーさん、おねーさん」
ブルッと震えた。
突然後ろからかかった声に振り返る。
「びっくりしたぁ。急にごめんね、探してるみたいだったから」
「探してるって、」
「酷い顔だね?」
「これは、」
「いーよ、いーよぉ。いろいろあるもんね」
柔らかな口調。
まるで全て知ってるかのように一方的に話す男。
不健康だと思うくらいに痩せていて、とんでもない長身。
きっとサンコンよりは背は低いんだろうけど、身体が細い分、身長が高く見える。
「要る?」
「なにを、」
「プッシャー決まってる?」
「あの、」
「言いたくないよね。まぁいいよ。いつも何やってんの?」
「ごめんなさい、何の話を」
「ちょっとだけなら分けてあげる」
この男は、さっきから何の話をしてるんだ。
そう首を傾げていると。
じり、と一歩にじり寄ってきた男に、頭の中で警報が鳴る。
「ほしいんでしょ?いつもいくらで買ってる?」
男はそう言って、私の腰を掴んでグイ、と引き寄せた。
「……一緒に使う?」
耳元の囁きに、全身が震える。
拒否反応を起こす私に、ニヤリと笑った男に右腕を掴まれたけれど、すぐに振り払った。
呆気にとられる男を尻目に、私は走った。