余所者-よそもの-
何か持ってくるって、何を?
そんなの、このドアを蹴破る何かに決まってる。
血の気はすっかり引いていた。
眩暈だってする。
それでも、早く。
早くここから逃げる方法を考えないと。
「……そうだ」
そうだ、スマホだ。
助けを呼ぼう。
ポケットに手を入れた。
鞄を探す。
自分の身体の線を両手でこするように弄(マサグ)った。
「うそ……ぜったい、嘘」
そんなわけない。
ポケットにも、鞄にも。
どこにもスマホがない。
そこで「あ……」と気が付く。
締作業の時に、充電器を差したまま。
カウンターの上に置いてきた。
つまり――
……連絡手段は、ない。
無機質な部屋。
事務デスクとチェアがあるだけの、この部屋。
「無理かも」
ぽつりと吐いた弱音は、誰の耳にも届かない。