余所者-よそもの-
「………」
古いスマホ。
あり得ない。
どんな奇跡だって思う。
……プルルルル、…プルルルル。
契約は生きていたようで、発信が始まった。
何度も何度も、コール音を聞いた。
部屋の外から聞こえる雑音から逃げるように、その音に没頭した。
もう、どれくらいの間そうしていたのかもわからない。
だから、呼び出し音が途切れたとき。
もはや現実を疑って、これは夢かとさえ思った。
『――…もーし?』
で……た。
「も…もし、もし!」
『あーう。コレ俺んじゃないよ。あったんだよ、そこに。持ち主は今風呂な。俺は酔ってるし眠みーし、そしたらうるせーし』
「潤、さん」
『なんで知ってんのー?』
「潤さんっ」
『ん?その声って』
「お願い。たすけてぇっ」
私はスマホに縋りつくように、その場へ突っ伏した。
見えやしないってわかってても、そうせずにはいられなかった。
――ドンドンドン!
「どっか電話してるぞ」
「面倒なことにならないか」
「大丈夫だろ。余所者だぞ」
「いい加減こじ開けろよ」
外の男の声が一段と大きくなり、ドアを叩く音も同様。
何かを力いっぱいぶつける音や、破壊混じりの音。
私は意識を電話の先に集中していた。