余所者-よそもの-

「………」

古いスマホ。
あり得ない。

どんな奇跡だって思う。


……プルルルル、…プルルルル。

契約は生きていたようで、発信が始まった。

何度も何度も、コール音を聞いた。
部屋の外から聞こえる雑音から逃げるように、その音に没頭した。


もう、どれくらいの間そうしていたのかもわからない。

だから、呼び出し音が途切れたとき。
もはや現実を疑って、これは夢かとさえ思った。


『――…もーし?』

で……た。


「も…もし、もし!」

『あーう。コレ俺んじゃないよ。あったんだよ、そこに。持ち主は今風呂な。俺は酔ってるし眠みーし、そしたらうるせーし』

「潤、さん」

『なんで知ってんのー?』

「潤さんっ」

『ん?その声って』

「お願い。たすけてぇっ」


私はスマホに縋りつくように、その場へ突っ伏した。
見えやしないってわかってても、そうせずにはいられなかった。


――ドンドンドン!

「どっか電話してるぞ」
「面倒なことにならないか」
「大丈夫だろ。余所者だぞ」
「いい加減こじ開けろよ」


外の男の声が一段と大きくなり、ドアを叩く音も同様。

何かを力いっぱいぶつける音や、破壊混じりの音。
私は意識を電話の先に集中していた。

< 170 / 276 >

この作品をシェア

pagetop