余所者-よそもの-
『わかった。お前今日すごい怪我をしてたんだってね。なんで外に出た?』
「彼氏が昼間シドに殴られたから。手当てをしようと思って」
『彼氏はどこに連れて行かれたの?』
「そう…そうだ。恵西を過ぎたところです。血がたくさん落ちていたので、それを私、辿って」
そう話すと、電話口から離れたところで『潤ちゃん、サンコン。いくよ』と聞こえた。
「ユキさん」
手に湧いた汗に落としそうになるスマホを、ぎゅっと握った。
みんなが来てくれるかもしれない。
そう思うと私は少し、平静を取り戻すことができる気がした。
『事務所の二階って言ったな?だいたいの位置は?』
「わかりません。血の跡を辿って、そのあとでたらめに走ったんです」
『窓から何か見えないの?看板とか、表札とか』
「窓を開けてすぐ壁です。なにも見えません」
ユキは何も言わない。
きっと私の気持ちと同じだと思う。
無理じゃんって。
何か目印になりそうなものがあればよかった。
この場所を伝えるヒントになるようなものがあれば。
恵西から彼の血痕を辿る道はきっと見つけられる。
でも、デタラメに走った道はわからない。
最初に出会った男から逃げるために複雑に走ったと思う。
狭い道を抜けたり、道を逸れたり。
決してまっすぐには進んで来なかった。
するとユキさんはあっけらかんとして言う。
『ごめん、かぁこ。助けられないかも』
その言葉に、不思議と焦りが引いた。
やっぱり?そうだよねって気持ちだった。