余所者-よそもの-
「わたし、知らなくて」
「それはいい」
シドは灰皿を手に取り、落とした灰に目をやりながら続けた。
「その話は後だ。俺が聞いてるのはなんで男を追ったんだってことだ」
心臓を掴まれた気がした。
言いたくない。
でも、それらしい言い訳も思い浮かばない。
トン、と煙草で灰皿の縁を叩く音に急かされた気がして、口を開くほかなかった。
「怪我をしてた、から」
「お前あの日、俺になんて言った。男とは切ったはずだろ」
あの日……はきっと、あの雪の日のこと。
私はシドに人生をやり直すと、そう言った。
だけど、どうしてだろう。
わからない。
「どうして?」
「なんだ」
「どうして、そんなに怒るの?」
シドは彼を追いかけたことに怒っている。
だけど私と彼のことは、彼には関係がない。
そう思っていた。
「それは俺が、お前を助けたからだ」
その言葉の意味を測るようにシドを見ると、背中を向けていたシドがゆっくりこちらへ向き直った。
些細な動作に安いベッドはキシ、と大げさに軋む。
「覚悟しろって言っただろ」
「覚悟ってなに?」
シトウの街でルールを守ること?
シドに従うこと?
でも、そのどちらも答えではなかった。