余所者-よそもの-
どれくらいの間そうしていたのかわからない。
――ブブ、とバイブ音が響き渡る。
シドはすぐに私から離れると、まるで何もなかったみたいにスマホを手に取り、耳に当てた。
「なんだ。…わかった。すぐ行く」
電話を切ったシドは、帰り支度を始める。
デスクの上のものをポケットにねじ込み、玄関口の方に歩きだす。
遅れまいとその後ろについて行こうとすれば、前の足がピタリと止まった。
「”Z地区”にはもう二度と入るな」
危うく背中にぶつかりそうになって、慌てて足を止める。
唐突に投げつけられたワードは、ずっと知りたかったこと。
「あそこは……掃き溜めだ」
「はきだめ?」
「薬物中毒者を集めた区画」
薬物。つまり、ドラッグ。
ニュースの向こう側でしか聞いたことのない単語。
その恐ろしげな響きに、思わず身体がこわばった。