余所者-よそもの-

それから間もなく営業時間を迎えると、ユキはAnBarを去り。

人もまばらな前半の営業をこなすと、やっと人入りの増えるこの時間。


午前0時のゴールデンタイムきっかり。

数名のお客さんに紛れて、潤が宣言通り私を迎えにやってきた。


「行くぜー」

「いや、あの」

さすがに今すぐは出られない。


「ちょっと今忙しいので待っててもらえますか?」

「忙しいの?」

きょとん、と目を丸める潤に「見ればわかるじゃないですか」と入ってきたばかりの客に視線を映して言った。

せめて一杯目のドリンクを出してからでないと。


すると潤は「サンコン、行ってくるから!」とカウンターに向かって声を張り、

「いってらっしゃい」

と、サンコンだってなんてことない顔で送り出してくる。


「いーって。これのどこが忙しいんだよ。居酒屋でもあるまいし、客は客で適当にやるからいいの。さっさと用意してこい」

そう言って、腰に巻く私のエプロンの結び目を後ろでシュ、とほどいた潤に行動を余儀なくされ。

外れたエプロンの代わりに、上着をひっかけると、いつの間にか爆音に変わったBGMを背にAnBarを後にした。

< 195 / 276 >

この作品をシェア

pagetop