余所者-よそもの-
「まず、Z地区は問題児の集まり。よくシトウに喧嘩を売るし、いわばシトウのタンコブ……っていうのが表の関係。裏じゃ敢えて定期的に小競り合いさせて小物のガス抜きに使ってる」
潤はそう言って、シトウとZ地区までを結んだ線の上に、大きく『×』を付けた。
続けて、ペン先はZ地区から露天街へと線を辿る。
「ところがそんな牙むき出しのZ地区も、露天街には手を出さない。むしろここは――」
そこには『〇』が書き込まれた。
「関係良好。利害関係が一致してる。クスリを回さないってルールはあるらしいが、いろいろと品々の取引があるらしい」
最後に、残った露天街からシトウに向かって線が這えば、そこは『△』だった。
「ここは微妙。良くも悪くも互いに干渉しない。その代わりに、規律ある露天街にZ地区のストッパーの役割を持たせてる。露天街はその恩恵として自由に商売出来るってワケだ。言っちゃえば冷え切った大人のビジネス関係、みたいな感じかな」
潤はそこまで説明をすると、カチ、とペンの先を引っ込めて、ポケットに戻した。
「賢い男だよ。どこか一つでも欠ければバランスが崩れるように仕組んでる。それぞれに今の状況がベストと思えるような関係性を持たせてるんだ」
私は潤の書き込んだ図をじっと見ていた。
頂点に君臨するシトウ。
それを支える二つの底辺として露天街とZ地区が並んでいる。
まるでこれは力関係の縮図。
恐ろしいと思っていたZ地区も露天街も、まるでシドの支配下にあるようだった。
「つっても争いは絶えないけどな。でも、誰も本当の意味でシトウを潰すことはできない」
「………」
「シトウの足は三本足。どれが欠けても共倒れ」