余所者-よそもの-
AnBarが位置するのは露天街の外れ。
だからなのか、図の中でシトウと露天街を繋ぐ『△』が、私にはとても不気味に見えてならなかった。
だって、これがもし。
もしも、シドが露天街に対して何かを起こせば、どうなってしまうんだろう?
絶妙なバランスで成り立っているというこの街は、どんな風に変わってしまうんだろう?
そんな『もしも』を考えながら、これまでの忠告を思い返せば。
潤が本当に私に言いたいことは――
「……潤さん。私のせいでAnBarやみんなに迷惑がかかるなら、わたし……」
「それはダメ」
「……え?」
「ダメだよ。AnBarを出てくとかって言い出すんだろ?」
その返答は意外だった。
てっきり、出ていけと言われるのだと思っていたから。
「たしかに紫藤との繋がりを持ったカナコちゃんは、俺らからすれば厄介者」
「………」
「だけどさ。ユキが最近ちょっと人間っぽくなってきて……俺、なんかウケるんだよね」
「……はい?」
唐突に飛び出した、ユキの名前。
しかも、人間なのに人間っぽくなったとか言われちゃってる。
しかもウケるだなんて、少し馬鹿にまでされちゃってる。
「アイツってさ、全部持ってるだろ?頭はいいし、顔もいいし、おまけに要領もいい」
「素晴らしい人生ですよね」
「だからなんでもこなせる代わりに、本気で欲しいモンがこの世にないんだよ。ずっとそんな顔してる」
ちょっとわかる気がする。
ユキはいつも退屈そうで、どこか寂しそう。
「カナコちゃんのおかげだよ。俺、久しぶりにユキが怒ってんの見た」
――私の、おかげ?
「だからさ。これからもAnBarに居て、アイツを困らせてやって」
じわっと胸に暖かいものが広がっていく。
なんだか嬉しい。
「………」
ん?
でも、ちょっと待てよ。
潤が最初に聞いたのは、シドと私の関係。
そしてシドとは関わるな、と釘を刺してきた。
なのに、最後はユキを困らせてやれ?
どういうことだ。