余所者-よそもの-

AnBarが位置するのは露天街の外れ。
だからなのか、図の中でシトウと露天街を繋ぐ『△』が、私にはとても不気味に見えてならなかった。


だって、これがもし。

もしも、シドが露天街に対して何かを起こせば、どうなってしまうんだろう?
絶妙なバランスで成り立っているというこの街は、どんな風に変わってしまうんだろう?



そんな『もしも』を考えながら、これまでの忠告を思い返せば。

潤が本当に私に言いたいことは――


「……潤さん。私のせいでAnBarやみんなに迷惑がかかるなら、わたし……」

「それはダメ」

「……え?」

「ダメだよ。AnBarを出てくとかって言い出すんだろ?」


その返答は意外だった。

てっきり、出ていけと言われるのだと思っていたから。


「たしかに紫藤との繋がりを持ったカナコちゃんは、俺らからすれば厄介者」

「………」

「だけどさ。ユキが最近ちょっと人間っぽくなってきて……俺、なんかウケるんだよね」

「……はい?」


唐突に飛び出した、ユキの名前。

しかも、人間なのに人間っぽくなったとか言われちゃってる。
しかもウケるだなんて、少し馬鹿にまでされちゃってる。


「アイツってさ、全部持ってるだろ?頭はいいし、顔もいいし、おまけに要領もいい」

「素晴らしい人生ですよね」

「だからなんでもこなせる代わりに、本気で欲しいモンがこの世にないんだよ。ずっとそんな顔してる」


ちょっとわかる気がする。
ユキはいつも退屈そうで、どこか寂しそう。


「カナコちゃんのおかげだよ。俺、久しぶりにユキが怒ってんの見た」


――私の、おかげ?


「だからさ。これからもAnBarに居て、アイツを困らせてやって」


じわっと胸に暖かいものが広がっていく。
なんだか嬉しい。


「………」

ん?
でも、ちょっと待てよ。

潤が最初に聞いたのは、シドと私の関係。
そしてシドとは関わるな、と釘を刺してきた。

なのに、最後はユキを困らせてやれ?


どういうことだ。


< 205 / 276 >

この作品をシェア

pagetop