余所者-よそもの-
足を止めないように、目を合わさないように。
耳を塞いで、口を結んで。
隅っこを歩いて、無関心を装う。
騒動から意識を反らす工夫は、シトウに住んでいる限り必要不可欠のスキル。
私もずいぶんと器用になった。
毎日の買い出しも卒なくこなせていたし、何の問題もなかった。
「返せ……!コレは私のモンだって、言ってるだろ!」
……だけどなんで。
気になる。
女の子の声がやけに幼く聞こえた。
でも、それだけじゃない。
私、この声をどこかで聞いたことがある気がする。
たまらず目を向けた。
「あの……子」
ひとつ結びの黒い髪の女の子。
それから、大きな一眼レフカメラ。
頭の中で、シャッター音が鳴った気がした。
――『なんでアイツを、その名前で呼んだ!!』
シトウの騒動の最中、悲しそうに私に叫んでいた、あの女の子だ。
「そのカメラ、この子のですよ」
頭の中でつながった瞬間、身体は動いていた。
「……ああ!?」
商人にそう凄まれて、すぐに我に返る。
ああ、まずったかも、と。
だけど一度出てしまったものは引っ込みもつかない。