余所者-よそもの-
「……ふざ、けんな……」
あ、と気づいた時には耳の横で風を切る音。
――ヒュ、と少女のやわらかな拳が商人に向かって飛んでいった。
商人はそれを片手で受け止め、鼻で笑う。
「これはなんの真似だぁ?」
「返せ……かえ、せぇぇ……!」
「本当のパンチってやつを教えてやるよ」
そう言って、見せつけるように丸められた拳と、張り付けた笑み。
――ヤバい、これは殴られる。
私はなりふり構わず、男を突き飛ばした。
「ああ……!?」
途端、殺意が少女から私へと移る。
素早く迫った手に、腕を掴まれた。
「あんまりナメてっと……」
「……放して!」
振りほどこうとデタラメに抵抗した。
するとその拍子、
「……あ」
汗でツルッと滑った私の手が、弦に弾かれた弓矢のように、勢いよく男の顔へと飛んでいった。
パシ、と軽い音の割に男が怯んだのは、そこが急所だったから。
商人は鼻をきつく抑えて、今度こそ視線で私を殺しにきた。
「オイオイオイオイ……洒落になんね…だろ、まじで……」
下から上へ、背筋に冷たいものが通る。