余所者-よそもの-
28話:一面
サアア、と血の気が引いた感覚がした。
「ユ……、ユキさん、逃げましょ」
「無駄じゃないかな。仲間はすぐその辺に転がってるだろうし」
「でもっ」
「招集まで、そう時間はかからない」
そう話している間にも、奥から一人、バットを手に持った商人がヌラリ、と現れた。
「ほら。もう二人になった」
まるで他人事みたく解説をするユキ。
私はその背中を掴んだ。
「無駄でもなんでも、逃げましょ……!」
ユキを強制的に方向転換させ、手を引き、全力でコンクリートを蹴った。
まるで泥の中を走っているみたいに、足は重い。
地面がぐらぐらと船みたいに揺れてる感覚もする。
「さっきの女の子は?かぁこの知り合い?」
焦る私とは対照的に落ち着き払ったユキの声。
なんでそんなに平然としていられるのかわからない。
「知り合いっていうか、一度シトウで声をかけられてっ」
「で?」
「それだけ、です!」
「……。それだけで助けたのか?」
「見てたんですか」
「お前って本当に……」
そこでやっと並走するユキの顔を見た。
てっきり、呆れた顔をされていると思っていた。
「馬鹿だなぁ」
だから、そうやって少し笑っているユキに驚いた。
いや、なんなら神経を疑う。
どうしてこの状況で笑えるんだろう。
どこかのネジが外れちゃってるのかな。