余所者-よそもの-
「……チ。もう一発だ……!」
再び振り上げられる角材。
ユキは私を後ろへ押しのけると、
「……う……そ……」
ふわりと、信じられない高さまで飛んだ。
そして滞空中にぐれん、と身体を捻れば、空間を裂くような蹴りが商人の横面に叩き込まれた。
ザザザ、と商人が地面に滑るように倒れれば、
「何してくれてんだコラァァァ……!」
もう一人の商人が後ろから飛び出し、叫びながら金属バットを振りかぶった。
ユキはそれを軽やかに交わすと、
――ガキン、と金属音を鳴らすバットを足で踏みつけ、前傾になった商人の腹を蹴とばす。
「……がぁ、ハ……!」
私はその光景を信じられない、という気持ちで見ていた。
まるでユキの背中に羽が生えたみたいだった。
息ひとつ乱さず、悠々と相手を無力化させる。
力任せの暴力とは、全く違う。
相手の力と勢いを利用して、いなして、無防備になった一瞬の隙に急所を突く。
まるで映画やドラマのアクション。
ユキには、相手の動きが最初から全て見えているみたいだった。
「………」
地面にへたり込んだまま、ぽかん、としていると、ユキのスマホがこちらに飛んできた。
「サンコンに鳴らしてる。出たら伝えて――」
そう言ったユキに意識を正せば、アーケードの中から複数人が怒鳴りながら走ってくる音が聞こえた。
ユキは首を右へ左へと捻りながら、向かってくる商人数名を迎える準備をしている。
「……『後片付けよろしく』って」